ボイス
【ボイス:2024年6月13日】髙橋直也選手
スタイルの違いを乗り越えて、チームの攻撃力を上げる力に
毎年加わる新たな選手たち。
その一人ひとりが自分だけの武器を携え、
チームにこれまでになかった強みをもたらす。
大卒ルーキーとして加わった髙橋直也選手が持つ武器とは?
ルーキーイヤーの歩みを振り返り、
ここまでの挫折と成長について、今ある思いを語った。
アドバイスが復調のきっかけに
「プロとしては1年目ですけど、去年も試合に絡んだり、高校時代もプロの試合に何試合か出させてもらったりもしていたので、1年目の重圧というかプレッシャーは、感じることなく試合でプレーできているかなと思います」
高校生年代までガンバ大阪のアカデミーで育ち、G大阪ユースではJ3に参加していたU-23チームでJ3リーグの試合に出場している。育成年代から常にレベルの高いカテゴリーでプレーしてきていることもあって、ルーキーとはいえ、落ち着いたプレーぶりという印象だ。しかし、今シーズンはその心境に至るまでにはちょっと時間が必要だった。
「ユースの頃や特別指定選手のときと、今、プロとして試合に出ている感覚とか気持ちは違います。ユースのときは失うものはなかったし、同い年くらいの選手が多くて、自分たちの好きなサッカーをやって勝てていたし、みんなうまかったので楽しくやっていました。大学生で湘南の試合に出たときは、大学でプレーしていた自信を強く持って参加していて、ボールを触りたいとか自分のプレーをしたいという気持ちで、自分のやりたいような好きなプレーができてました。でも、今年に入ってからは、チームのことを考えることも多いですし、チームの戦術を気にしすぎるときも多くあるかなと思います」
プロとして迎えた初めてのシーズン、スタートからチームの一員として練習やキャンプに参加し、チームの目標に向けて戦術の浸透やチームワークの熟成を図る日々を過ごしていたが、リーグ開幕を迎える頃は悩みの真っ只中に。伸び伸びと自分の良さを出すことだけを考えてプレーできていた大学生までとはまったく違う思いを経験し、その状況に戸惑っていた。
「始動して2カ月ちょっとぐらい、3月、4月前くらいまでは、自分でもうまくいってないなと思ってましたし、自信もなかったです。自分のプレーを映像で見て、初めて『なんか下手くそだな』『恥ずかしいな』と思うくらいの出来だった。調子が悪いというよりうまくいかないという感覚でした」
どうやらチームの一員としての意識や責任感がよくない方に働いたようだ。
「ガンバユースはパスサッカーで、相手をいなすようなプレーをみんながしていたし、みんながそこを目指すなかで自分のプレーができていた。大学のときも自信があったし、周りの選手から信頼されている、頼られているというなかで自分も周りに合わせてそのなかでできていたと思います。プロになってからは、なんて言うか…例えば遠藤保仁さんがいたら、その人に合わせるサッカーができると思いますけど、自分はそんなすごい選手でもないし、周りの選手の方が経験も実績もあるなかで少し遠慮してしまったというのがあって、周りのことを考えすぎることが増えたり、やりたいプレーができなかったり」
言葉は過去形。つまり、悩みからは脱しつつあるが、それでも苦しい日々を過ごした記憶は今も強く残っている。
「自分の考え的には、チームの戦術とかに捕われすぎたというのが一番強いです。それで1回、チームのやりたいこともありますけど、自分自身はどういう選手なのかっていうのを振り返ってみました。これまでやってきたプレーを見たり、強化部のやなさん(柳原裕強化部スタッフ)に相談したり。そのなかで一番は、今年から横浜FCに移籍した中野よしくん(中野嘉大選手)とご飯に行く機会があって、そのときに話したことで自分の中の何かが吹っ切れたというか。その日からなぜかよくなっていきました」
特別指定選手だった昨シーズン、中野選手と一緒にプレーするなかで、共通点が多いと感じた。
「よしくんもボールを繋ぐとか、感覚的に自分と似たものを持っていると思います。湘南ではなかなか試合に出られないという経験もあって、今年同じ境遇にいる自分の気持ちもわかってくれた。そこで『お前の良さがなくなったら意味ないぞ』って言われた言葉が響きました。そのときはもう湘南で試合に出られるとは思えなくなっていたほどうまくいってなかったんですけど、とりあえず『自分の良さは出さないと』って思えて、それがきっかけで吹っ切れた感じがあります」
中野選手のアドバイス通り、自分の良さを出すことを意識して練習に取り組み、徐々に自信を取り戻した。その結果、試合出場のチャンスを掴む。
「湘南で当たり前のことは絶対に徹底してやる。それをやりつつ、そこで自分の良さを出せるように。難しさはありましたし、今もありますけど、自分らしさを出せるように工夫しながらやれていると思います」
今までとは違う環境で自分らしさを出す工夫。躓いた2カ月間は、それを見つけるための時間となった。