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【ボイス:2015年12月11日】秋元陽太選手 [3]

30歳までに何ができるか それがゴールキーパーの選手生命を決める

  今シーズン、ゴールキーパーは3人でスタートした。残念ながら梶川裕嗣選手はシーズン半ばの7月に怪我で離脱したが、新加入したイ・ホスン選手は秋元選手のライバルとして馬入の練習グラウンドでも存在感を放っていた。

「ホスンについては、コンサドーレ(札幌)がJ1に昇格したときの立役者として知っていたし、サイズも僕よりも大きいですし、足元もある。僕が見習うべきところがあるので、ホスンの良いところを自分が必要だと思ったら吸収しようと思いました。試合でもホスンが出ることになったらホスンをしっかりサポートしなければと思っていましたし。
でも、僕も去年、ああやってちゃんと試合に出てJ1の切符をつかんだからには譲りたくない気持ちもあった。そういった部分では、ホスンを成長させられるように僕がもっとしっかりやらなければという思いも強かった。そうやって良い刺激をもらったからこそ、成長できたのかなと思います」

スタメンを争いながら、どのポジションの選手よりその競争相手をリスペクトしていなければならないのがゴールキーパー陣。今シーズンもポジション争いは激しかった。

「競争があること自体はすごくいいことだと思いますし、僕自身も年齢的にももっと成長しなければいけないと思っているし、裕嗣に関してはすごく必死に食らいついてきて頑張っているなかでケガをしてしまって残念だったですけど、裕嗣のためにもという思いもありました。実際僕がキーパーの最年長なんで、試合に出させていただいた分も引っ張っていかなければいけないと思いました。それに僕も出られない時期があったので、やっぱり去年積み重ねてきたものをしっかり活かさなきゃいけないという思いもありました」

いつも誰かの背中を追い続けてきた秋元選手だが、今やチームでも年長組。ゴールキーパー陣に限れば最年長となった。

「ゴールキーパーは息が長いって言いますけど、僕は30歳までに何ができるかだと思ってる。苦労とか自分をどれだけ30歳までに積み重ねていけるかで決まるのではないかと。楢崎(正剛)選手(名古屋グランパス)がそうしたかはわからないですけど、ずっと第一線でやっていけるというのは本当に尊敬するところ。やれるなら長くやりたいですし、お手本になりますね」

勝敗に関わるセーブができるゴールキーパーを目指しているが、目立つのは嫌だと考えている。

「地味でいいんです。ゴールキーパーが目立つ試合が良いかというとそういうわけではないですし、地味で良いのでチームを勝たせられる、チームに良い影響を与えられるような。ここ1本をしっかり止めるっていう。J1はまだ1年しか出てないので、これから積み重ねていければと思います」

曺貴裁監督が考えるゴールキーパーにとって必要な要素はというと「積極性とかリーダーシップとかいろいろあるけど、チームがやられているときに顔色を変えないでやれるメンタルっていうのがフィールドの選手より必要でしょうね。誰も助けてくれないし、戦術的なこともあって自分のところで取れなかったりするし。そういう意味では逆境にビクともしないメンタルが必要」と言う。

「特に曺さんの元でやるなら、動じたところは絶対に見せてはいけないです。
曺さん、すごく選手を見ているんです。見てないふりして見てる。ちょっと変わったとか……弱気とかすぐに分かっちゃうので、特にキーパーは見せてはいけないと思います。
何回か個別に話しましたけど、厳しいことは言ってくれますけど、それは自分のために言ってくれていると感じます」

今シーズンは、そういったコミュニケーションをとるなかでメンタルについての話もあった。

「意外に強くなったなって言われました。メンタル、強くなったなって。愛媛に行ったときからそういう覚悟みたいなものがあったので、3年、4年かけてだんだん築けてきたのかなと」

積んできたものがひとつ、評価を得られたシーズンでもあったようだ。それでも曺監督のその鋭い観察眼で分析されるのは「なかなか厳しいです」と笑う。来年は、20代最後の年となり、いよいよ自分自身で考える節目を目前に控える事になる。どんな課題を自分に課し、成長を遂げていくのか、切磋琢磨は続く。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行