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【ボイス:9月30日】坂本紘司選手の声
時間は、同じリズムを刻んで進んでいるわけではない。サッカーの試合を観ていると、そんな感覚を後々まで記憶に残すシーンに遭遇することがある。
つい最近の試合で、そんな体験をしたという方は多いのではないだろうか?
その試合とは、9月13日に行われた第39節VS横浜FC戦のこと。終盤までスコアレスで一進一退の攻防を繰り広げたこの試合は、89分に坂本紘司選手があげたゴールで劇的な勝利を収めた。
待ちに待ったゴールの時、時間は駒送りのようにゆっくりと刻まれた。
この、値千金のゴールを決めた坂本選手は、今、ベルマーレでもっとも輝く存在感を放つ選手。ここぞという時の勝負強さは、チームメイトはもちろん、サポーターからも絶大な信頼を集めている。今回は、その坂本選手の魅力を解き明かしてみたい。
明確な目標の達成に向けて、
迷いなくやっていくだけ。
「たまたま得点シーンは、僕のところにボールが来ましたけど、みんなの気持ちを代表してシュートを打ったつもりでいる。僕が特別というのではなく、勝ちたい気持ちというのは、本当にみんな強く持っている。そういう意味では、本当に良いチームだし、良い選手たちだなと思う」
インタビューを行ったのは、横浜戦の翌日。一瞬の静けさと、その直後の爆発したような歓喜にスタジアムが揺れたゴールについて、試合後のコメントで田村選手が『一番気持ちの強い選手が取ってくれた』と語ったことを伝えると、坂本選手は笑顔でこう答えた。
神奈川ダービーと銘打たれるこの対戦は、今季3戦目。第2クールまでの2試合は、ベルマーレにとって上昇のきっかけとなった験のいいカードだった。そんな記憶があるだけに、第3クールに入って今ひとつ流れを引き寄せられないでいるベルマーレにしてみれば、三度上昇のきっかけにしたいと臨んだ試合。
横浜FCから見れば、同一カード三連敗は絶対に避けたいところであり、ベルマーレは何が何でも倒さなければならない相手であった。
互いの譲れない気持ちが表現された試合は、横浜FCの2列のラインを整えた守備陣を崩すのに、ベルマーレがチャンレンジしてはボールを奪われるという一進一退の攻防を繰り広げ、試合終盤までスコアレス。アディショナルタイム直前の決勝ゴールでベルマーレが勝利を得たが、ポゼッションでは横浜FCが勝っていたため、見方によってはストレスの溜まる試合でもあった。
「ボールキープ率でゲームを観る人もいると思いますけど、うちは、長くボールをキープして、というサッカーをめざしてはいない。ゆっくりボールをキープしてという時間帯を作るよりも、1回でも多くゴール前にボールを運んで、自分たちから相手の守備陣を崩していこうというのをコンセプトにやっているので。
その分、相手の守備の網をかいくぐっていくのに狭いところを突いて行こうとする時もあるので当然リスクがあってボールを失うこともある。でもそれを怖がっていたら多分、すごく遠回りをしてチャンスを逃してしまうこともたくさんあると思う。そういう意味では、確かにミスが多くなって相手にみすみすボールを渡してしまって、その分、守備をしなくちゃいけないんですけど、それでもうちは、自分たちから攻撃的に相手のディフェンスをこじ開けて点を取るんだというサッカーをしているので、ポゼッションはあまり気にしないで、僕は本当に90分間の中で絶対1点取ってやるという気持ちでやってました」
今季のはじめ、反町監督は、『サイドにゴールはない』と言って今のスタイルを作り上げた。その反町監督のサッカーを体現する選手の言葉。今ひとつ、調子が良くない今も、自分たちがやっているサッカーへの自信と監督への信頼が伺え、気持ちの揺らぎすら感じられない。
「サッカーは、いろんなサッカーがあると思うんですけど、サイド攻撃を重視してクロスを20本上げてそのうち1点入れば良いっていうサッカーもあると思うし、とにかくボールをつないでっていうサッカーもある。いろいろあるし、何が良いっていうのは言えない。
それでもうちがJ2で上位にいて、得点数も上位にいるということは、ボールをたくさん繋いだからではなく、ゴールに直結する、ゴールをめざすサッカーをやっているからでしょうね。僕たちは、自分たちのスタイルっていうのを持っている。僕自身もそういう意識でやって、今季は自分自身得点も増えた。うまく回っている時は、観ている人もおもしろいと思う。まぁ、うまくいかない時はみんなに歯がゆい気持ちをさせてしまっていると思うけど」
第2クールの中盤までは、1試合で複数得点を挙げることも多く、その攻撃力に目を見張ったものだ。しかし、この横浜戦に限らず、ここ最近は、1点が遠い。そんな状況に歯がゆい思いをさせている、ということは選手自身も感じているようだ。しかし、リーグ終盤を迎え、戦術の分析が進んだ今は、対戦相手は当然、ストロングポイントを押さえ込んでくる。
「毎試合3点くらい取れれば良いけど、そこは焦れずにやっていくしかない。今の状態がベストでは全然ないですけど、でも自分たちのめざしているサッカーのクオリティを上げていくしかないと思う。暑いからボールを取られないようにボールをまわして、詰まったらやり直してとやっていたら、一生点はとれない。僕たちのやっていることは間違っているわけじゃないから、そこのクオリティを上げていくこと。当然ミスはしないに越したことはないわけで、そこは個人個人で自分たちのレベルを上げていく。確かに横浜戦は、暑かったから、ボールを失ってから奪い返すまでにやっぱりかなり体力を要したので、そこの反省点はものすごくありますけど。
それに、他の上位のチームも同じだと思うけど、上位にいれば、ほとんどの対戦が下位チームと当たるわけで。第1クール、第2クールでうちが勝っている相手が多い分、向こうは3回目の対戦は何が何でもと思ってくるだろうし、上位を食ってやるっていうのはひとつのモチベーションにもなっていると思うから、確かに難しいゲームになる。でも僕たちの方が明確な目標を持っているし、強い気持ちを持っていると思う。この後は、多分こういうぎりぎりのゲームが続くとは思うけど、本当に勝ちたいと思っている方が勝つ。だからもう迷いなくやっていくだけですね」
相手の読みを上回る何かが必要な時期を迎えた。そこでモノをいうのが監督の引き出しの多さと、采配の妙となるが、選手個々人には、プレーの質の向上と気持ちの強さが求められる。この2つには、明確な目標があることが何よりも重要。ブレない気持ち、今こそこの強みを発揮する時だ。
1点取るまで、周りの信頼を得るまで!
走り続けて、チームトップスコアラーへ。
今季、反町監督が就任し、同時に新しいスタイルのサッカーが目標となった。システムを数字で表せば、4-3-3。Jリーグでは数少ないスタイルのせいか、時に守備的と誤解もされたが、ベルマーレが結果を出すにつれ、理解も深まってきたようだ。
しかし、どんな戦術も、表現する選手がそれを受け入れ、理解し、実際に動かなければ、誰の目にも触れることはない。この新しい試みを、坂本選手はどう感じたのだろうか?
「契約の時に、監督が構想の中で攻撃的なシステムを思い描いているというのを聞いて、すごくおもしろそうだと思った。良い刺激というか、今、主流の4-4-2はもうずっと何年もやっていたので、僕自身はぜひやってみたいなと。実際は、いる選手を見極めてから監督が決めるんだろうとは思ってましたけど、すごく楽しみにしていました」
新しいチャレンジを前向きにというより、意欲的に迎え入れた。
しかし、新しい試みは、そう簡単にはカタチになるものではない。
「それはもう初めてですから、1ヶ月くらいの準備期間でパーフェクトにできるわけじゃなかったし、おもしろいと思ったけど、これは今年は大変になるなというふうにも思った。ただ、監督が、というか、僕たちがやりたいスタイル、こういうサッカーをめざしていきたいということがすごく明確にわかったし、なぜそのシステムにしようとしているか、ということもすごく理解できた」
反町監督曰く、『うちは相手がイヤになるくらい仕掛けていく』。
4-3-3のシステムは、最終ラインの前にアンカーを1人置き、前線の人数を増やし、さらにサイドバックまで含めて、アタッキングエリアに人数をかけて点を取りにいくスタイル。リスクも小さくはないが、攻撃がハマった時の小気味良さは、格別だ。
「キャンプの時から練習メニューを見てもやりたいことがすごく伝わってきた。もちろん、最初からすべてうまくいくとは思わなかったけど、これをずっとやり続けていけばホントにおもしろいんじゃないかなと思った」
キャンプから開幕まで約1ヶ月半。この間にできることは限られている。振り返ってみて、開幕戦のときは、どの程度の完成度だったのだろうか?
「攻撃に関しては低かったと思います。それに開幕戦はやっぱり負けたくないので、僕自身も攻撃に行きたい気持ちもありながら、慎重になっていたところもあった」
開幕の相手も横浜FCだったが、この試合は慎重な試合運びが印象に残る90分だった。得点も2点を重ねたが、システムの攻撃的な部分の本質は披露できなかったというのが実際のところ。監督自身も試合終了後の会見で、やろうとしているサッカーが見えなかったと問われ、『おっしゃる通り。楽しみにしていてください』と答えている。
そんなやり取りがかわされた開幕当初、坂本選手自身は、システムを機能させるために、トライを繰り返していた。
「自分はどちらかというとパスをさばいていた方で、このシステムになって今度はパスを受ける側の役割も担うようになったけど、動いた時になかなかボールが出てこないなというのが開幕当初。昨年より結構動いて攻撃面で出て行ってるなって感覚はあったんだけど、ボールがそこに出てこない、ってことが何試合かあった。それでもそれを続けていく、出ないから動くのをやめるのではなく、出てくるまで続けよう、1点取るまで続けよう、周りの信頼を勝ち取るまでとにかく走ろう、動こうと思って最初の頃はやっていたのはありました」
練習を重ね、練習試合で試し、さらに実戦で試行錯誤を繰り返す。そうして積み上げたものが、リーグ戦のさまざまなシーンで実りを見せはじめたのは、敗戦を喫してはいるが第6節アウェイの鳥栖戦あたりからだろうか。坂本選手が今シーズンの初得点を挙げた試合でもある。
「すべて思い通りじゃないですけど、チャンスと思ってチャンスゾーンに入った時には、何かしら僕がアクションを起こして点を取れる場所に走っていたりすることを周りもだいぶわかってくれてると思う。そういう意味では、今はだいぶチャンスに絡めるようになってきたし、そこはやり続けた結果かなと思います」
また、このシステムは、中盤の3人の運動量によって支えられていると言っても過言ではないほど、中盤の選手が担う役割は重要だ。アンカーはピッチの左右60mを自分の守備エリアとし、攻撃的なポジションを取るふたりは、最終ラインから最前線まで攻撃のみならず、守備においても要としてチームを引っ張り続ける。
「試合中は、いろんな仕事があった方が集中力が切れないし、いろんなことをやりたいから、そういう意味でもたくさん仕事があった方が良い。確かに体力的にきつくなるけど、今はもうそれが当たり前になっているから、自分のポジションがきついとは思わない。それに、そのポジション・ポジションで役割があるし。今のポジションがきついといわれても、周りの選手が犠牲になって僕をフリーにしてくれている部分はあって、良い思いもさせてもらってるんですよ」
良い思い、とはやはり得点。今季は、ハットトリックも含め、自身プロ生活シーズン最多の得点を挙げている。このように得点で結果を出していることもあるせいか、リーグ戦が進むにつれ、けが人やら警告の累積による出場停止などが重なった時には、前線の3人の一角を担うこともあった。
「フォワードでも中盤でも変わらず相手がイヤがるだろうなというところで仕事をする。相手が一番イヤなのは、ディフェンスラインと中盤のラインの間。相手からしたら誰が僕のことをマークするのか、困惑するようなイヤらしいポジションでボールを受けてというのが理想。試合中は、そこで何回ボールを受けられるかを考えているから、もとのポジションは、あまり考えないです。今だったら雄三(田村)や寺さん(寺川)とかを信頼して、僕がより前で仕事をするということを意識しています」
反町監督は、坂本選手を『前への推進力のある選手』と評している。それに加え、350試合を超える試合出場の経験で培ったクレバーなサッカー観で試合を捉えている。ベルマーレの昇格の行方を握る中心選手であることは確実だ。
まず練習を目一杯やる、
それがベルマーレのスタンダード。
ベルマーレでプロ生活10年を過ごす坂本選手。その間に監督は何人か代わったが、どの監督も最終的には坂本選手を中心選手として使った。でなければ、試合数の多いJ2リーグとはいえ、350試合という出場記録は達成できなかっただろう。
どの監督にも重宝されるには、やはり理由がある。坂本選手の評価のポイントを反町監督とカルロスフィジカルコーチに尋ねると、ふたりが口を揃えたのが、練習に対する姿勢だった。
その姿勢を表すのに、カルロスコーチがとてもわかりやすい表現をしてくれた。『紘司は、18歳の選手のように毎日の練習に取り組んでいる』。
プロ生活12年目を迎えた選手が、まるでプロになったばかりの選手のように毎日の練習に真摯な気持ちで取り組んでいるというのだ。
「単純に、グラウンドにいるのは好きです。ひとつはそれ。単純にサッカーをやっているのが楽しい。それに、あと何年やれるかわからないし、毎日適当にやっても、目一杯やっても、どうせ疲れるなら楽しんでトレーニングした方がいいから」
グラウンドにいるのが好き、サッカーが楽しい。基本だけれど、一番大切な気持ち。一番最初の答えは、聞いている方がうれしくなるような理由が返ってきた。
「それに、やっぱりトレーニングでしっかりやっておかないと、試合で良いパフォーマンスを出せないというのは、何百試合も出てる自分の経験からある。その感覚が自分の中にあるから、今日しっかりやっておかないと、今度の試合、負けてしまうんじゃないか、とか。逆に負けた時に、『あの時、練習であそこをやっておけば、この試合、勝てたんじゃないか』って、試合の後に思うことが自分の中で一番悔しいから。練習を目一杯やっていても負ける時は負けるけど、でも負けても、そういう後悔はしたくない。それはもう習慣、今までずっと、勝ったり負けたりしてきた中での習慣になっている。オートマチックにそういう気持ちになる、というのがひとつ」
『練習は嘘をつかない』というのは、反町監督がよく口にする言葉だが、まさにそれを体感で知っているということだ。
たぶん、この10年の間には後悔したこともあったのだろう。しかし今は、その後悔すら糧にしている。
「もうひとつは、自分はもう10年このクラブにいるから、やっぱり若い選手たちに少なからず影響を与えてしまう。良い影響も悪い影響も。自意識過剰に、そういうふうに思うようにしています。『紘司さん、あれくらいで試合に出られちゃうんだ』って思われないように。『紘司さん、ちゃんとやってるから試合に出られるんだ』って思われたい。
そして、それがこのクラブのスタンダードになっていけば良い。そういうプレッシャー、プレッシャーというと違うかもしれないけど、そういう立場でもあるんじゃないかと、この年になって思うことはあります」
“クラブのスタンダード”。そこまで思いが至る選手は、なかなかいないのではないだろうか?
ベルマーレは、親会社を持たない市民クラブとして、在り方を定め、めざす方向性を明確にし、その中で自分たちのサッカースタイルを定義し、それを実現するための監督や選手を集めている。
すべてはマニフェスト730に記されているのが、そこに選手に求める6訓という項目があり、その中に、“100%の集中力で練習を行うこと”という一文がある。もちろん、6項目をクリアしているからこそベルマーレの選手なのだが、それがチームの中できちんと根付いているかと言うと、まだこれからの部分も多い。
坂本選手には、この姿勢がクラブのスタンダードとしてしっかりと根付くまで大いに自意識過剰になって、若手を刺激し続けてもらいたい。
最後は絶対に昇格すると信じて!
ハラハラドキドキも楽しんでほしい。
リーグも終盤を迎えて、やはり昇格へのプレッシャーが全くないとはいえないようだ。そんな気持ちが堅さや慎重な戦いぶりとなり、がっかりするような試合内容を観せてしまうときもある。
「やっぱり勝たなきゃいけない。勝ち点3をとらないといけないという気持ちが、みんなの身体を重くしているっていう要素も少なからずはあると思う。でもそこは、みんなで打ち勝っていくしかない。
それに、観ている人が『ちょっと緩いな』と思ってしまう試合がある事自体、悔しい。そこはもう、51試合あればたまにはあるよっていう言葉で片付けないで、やっていくしかない。ただ、そうなってしまう理由が完全にわかれば、多分全部の試合に勝っていると思う。だから常に同じ気持ちで臨めるように努力するだけ。相手の順位に関係なく、目の前の試合に勝つ、昔のこととか先のこととか考えないで、その試合に100%集中する。毎試合、そういう気持ちで臨めるようにやっていきたい」
現在昇格圏内の3位。だが、ごくわずかな勝ち点差の中で4チームがひしめき合っている。この状況は、さすがに緊張してもしかたがないだろう。
だが、逆に言えば、昇格圏内にいるからこその緊張感。昨年までは、手が届きそうで届かなかった、その場所にいる。
「僕自身は、楽しんでますね。みんなに期待をしてもらって、熱い試合を、緊張感のある試合を毎試合やれることがうれしいし、試合前の高揚感、試合に臨む緊張感、そういう中で自分を、いろんなものを賭けて戦う舞台があることが楽しい。それに、『ベルマーレ、今日どうだったんだ?』って、今、多分すごくたくさんの人が結果を気にしてくれている。そういう状況がうれしいし、楽しい」
ここにいる、ということを今楽しまないで、いつ楽しむというのだろう。坂本選手もそんな気持ちで今の状況に緊張感を持ちながら、楽しんでいる。
「せっかくですからね。ラクしては上がれないと思うから。そういう意味では夏から今にかけて少しずつ、もう1回自分らしさを出せてきていると思う。本当に楽しんでやろうと思い始めてから、もう一度パフォーマンスも上がってきてる。だからそういう気持ちで残りの試合、臨めればと思っています」
第3クールに入り、再び、得点数を伸ばしている坂本選手。その得点シーンが印象的なのも見逃せない。横浜戦のゴールもそうだったが、劇的なゴールを決めた後、坂本選手に笑顔はない。観ている人まで巻き込むように内側から溢れ出るエネルギーを爆発させる。
「最近、『点を取って、むしろ怒ってるんじゃないの?』っていわれる(笑)。横浜戦のゴールも、入ったのは確認したけど、その後はもうわからない。昔は点を取って笑っていたけど、今は自分でもわからないくらいテンションが上がっている。でもそのくらいのテンションで試合をやっている。
得点も早く入って楽勝できたに越したことはないし、横浜戦のような試合では本当にハラハラドキドキさせたと思うけど、正直にいえば、今までそういう感覚はみなさんに感じてもらえなかったこと。だから観ている方にはそのハラハラドキドキも楽しんでもらえれば。最後は、絶対に昇格するんだって思いながら、ハラハラドキドキしてもらいたい。
もう目標はひとつしかない。それに向けて信じてやるしかないと僕は思っているから、強く思って。『絶対にJ1に行く』という気持ちを、今はライバルチームよりも強く思ったもん勝ちだと、むしろそれくらいだと思っている。選手はその思いがプレーに出ると思うし。観ている人は、みんなの気持ちを声に出して僕たちを後押ししてくれたら、必ずいい結果が出ると思う。一緒に、選手だけじゃなくて、本当に一緒になって最後まで戦い抜きましょう、という気持ち。ベルマーレを応援していて良かったなっていうふうに思ってほしい。そういう試合をできたら良いと思います」
警告の累積による出場停止や怪我、疲れなどが重なり、次の試合には、どの選手が出てきてももうサプライズではない状態だ。すでに総力戦。しかし、それはどこのチームも同じ。そんな中でも、ベテラン選手の気持ちの入ったプレー、今年成長した選手のさらなる進化、そしてフレッシュな選手がいかにチームを活性化するか、まだまだ楽しい期待もある。
そしてそのチームを支えるのは、ベルマーレを応援するすべての人たち。どんなに良いパフォーマンスをしても、選手だけでは勝てない。ベルマーレを応援する、すべての人が心を1つにしてこそ手に入るのが昇格のチケットだ。
残り試合、昇格することを信じ、この状況を楽しみ、そして選手とともに1試合1試合を戦おう。
取材・文 小西なおみ
協力 森朝美、藤井聡行