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湘南ベルマーレ・福島ユナイテッドFC 提携会見
【福島ユナイテッドFC 代表取締役 鈴木勇人氏】
皆様こんにちは。本日は湘南ベルマーレ、そして福島ユナイテッドの記者会見にお越しいただきまして本当にありがとうございます。また常日頃から、湘南ベルマーレそして福島ユナイテッドFCの活動にご理解とご支援を賜りまして、篤く御礼を申し上げます。まずはじめに私のほうから、お話をさせていただきます。
まずもって、湘南ベルマーレのJ1昇格おめでとうございます。我々、福島ユナイテッドフットボールクラブは、まだJリーグまで届かない位置におりまして、今年やっとJFLに昇格を果たすことができました。
本日、このJ1昇格をした湘南ベルマーレさんと、福島ユナイテッドFCが事業提携を行うということに決定をいたしましたので、皆様に、まずもってご報告を申し上げます。
この提携は、我々がまず地方のクラブとしてどのような形でこれからJリーグを目指し、かつ地域のために役立つことができるかというふうに考えていたときに、東日本大震災、そして原発事故という非常に厳しい福島の状況がございます。
その中で、震災直後、まっ先に我々福島のほうへ、ベルマーレさんのほうで、子どもたちのために支援物資を運んでいただいたり、あるいは子どもたちとサッカー教室をやっていただいたりということをしていただきました。
またその後、「KIDS GUARD SHONAN」ということで、東北地区、そして福島の子どもたちを中心に、湘南地域のほうに呼んでいただきまして、試合観戦、あるいはトレーニングマッチ、そして海での体験などたくさんの思い出作りができる活動まで実施していただきました。
私も何回か足を運ばせていただいて、この状況を見せていただきましたが、その中で、この度、湘南ベルマーレ、そして福島ユナイテッドと、これから地域のために、かつ、地方のクラブとしてですね、あるべき姿に一石を投じるようなことができないかという話にどんどんなっていきまして、本日こういう形で決定をした次第でございます。
詳しい話としましては、竹鼻GMのほうからお話をさせていただきます。本当に、眞壁社長はじめスタッフの皆さんにこのような場を作っていただきまして、また準備をしていただきまして、ありがとうございます。光栄に思いますし、今後我々も、責任と誇りを持ちながら活動していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
簡単ですが、挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【湘南ベルマーレ 代表取締役 眞壁潔】
皆さんこんにちは。シーズン開幕がいろんなニュースが流れてるお忙しいときに、遠方平塚までありがとうございます。今日は雪は降っておりませんが、雪の日も平塚だけは雨だったという、非常に今シーズンを占う上で前向きに捉える週末を過ごして今日を迎えております。
福島ユナイテッドとベルマーレとの縁は、今お話いただきましたが、私の記憶の中でご縁をお話するとですね、実は福島ユナイテッドさんに講演に呼ばれたことがあります。
福島の駅を降りましたら、車で迎えに来てくれてですね、その車中にスクールの告知が貼ってある。「こんな車ですみません」と言われながらですね、「いやいや、ご心配なく」ということで乗っていました。
講演に、どのくらいのお客さんが来ているんだろうと思っていましたら、たくさんの方がいらっしゃっていました。そこで話をさせていただいたときにですね-講演というのも、たくさんやってるとですね、ちょっとボーっと聞いている会のところ、何か義理で来ましたよというところ、真剣な眼差しで聞いてくれるところ、学生ですと寝ちゃうですとかね、大体分かれるものです。
そんな中、福島では大変熱心に聞いていただいて、終わったあとも協会の方やボランティアをやっている方など、次々に集まってきて「どうされてるんですか」「こうされてるんですか」そんな話を随分長くした記憶があります。
その後戻ってまいりまして、うちに時崎という選手がいまして、うちのあとで水戸に行って“選手を引退しようと思う”という電話をもらいました。
そのときに「そういえばお前、福島出身じゃないか」と。福島には、一生懸命頑張ってるユナイテッドというチームがあるから、行ってみたらどうなんだというような話を軽くしましたところ、彼もその方向を少し考えていたようで、「実は本当にそれは考えてるんです」と。故郷に戻って、自分は決して日本代表になった選手ではありませんけども、地域のサッカーのために尽くすというのは決して悪いことじゃないよという話をして、真剣に考えているということでした。
その後、震災がありまして、大倉(強化部長)が東北地方にいる元選手、あるいは関係者に次々電話したところですね、時崎がなかなか連絡がつかないと。何とか奥さんの実家の西の方に移動したということで、数日後に電話で話しました。
「良かった、元気で」と話をしたら、「眞壁さん、福島ユナイテッドは潰れるんです」って、いきなり言うんですね。震災からまだ多分10日も経ってない。「何でだ、あんなに頑張ってみんなでやってきたのに」という話をしましたら、ちょうど前の年の秋ごろですけども、南相馬にもスクールをオープンしたと。当然大変な災害で、その段階で、僕もちょっと日付のズレがあると思いますけども、実は多分もう放射能の問題は行政がある意味理解をしていて、南相馬が駄目なだけではなくて、スクール自体ができないと。いわゆる、極力やるなと。やったとしても何分以内に抑えろみたいな話です。そうしますと福島ユナイテッド自体は、彼の話によると、かなりまめに地域活動を、サッカーの普及をやっていて、数百人の子どもたちがいる。そこからの月謝が入らなくなると、基本的に活動費がなくなる。従ってユナイテッド自体の活動を停止せざるを得ないというような話でした。
うちもご存知のように、当時債務超過を目の前に控えていて、人のことを言っている場合じゃないという状況ではございましたので、送金はできないけども、何かできることがあると思うから考える、ということで。
まず、4月末からのゴールデンウィークですが、親御さんは子どもたちをどこかに連れていく状況じゃないだろうし、子どもたちが思い切り外で遊べない状況であるなら、湘南に招待しようということになりました。
当時、皆さんも記憶あると思いますけども、日本中が「何か助けたい」「何かしてあげたい」と思っていました。そんな中、そうだ、それであれば、皆さんに協力をお願いして、子どもたちを呼んではどうかと。うちは先立つものが無いですから、地域で今まで応援いただいている企業に電話だけでお願いしたところ「分かった」と、次々にやるという話になりまして、おかげさまで子どもたちをこの湘南に迎えることができました。
その間も「とにかく潰れないように、頑張ったほうがいいよ」と時崎に言ったところですね、なんとか存続できることになりましたという話でした。
どういうことだと話しますと、今、先にご挨拶されました鈴木さんが、「潰しちゃいかん。自分が、火中の栗じゃないですけども、やるから残しましょう」と言ってくれてユナイテッドは残ったと。
この先どこまで残れるかはわからないけども、頑張りますということで。
なかなか不器用なクラブでして、何度も地域の全国決勝まで行くんですけども、3回でしたか、びっくりするような点数で負けちゃってですね、JFLに上がれなかった。そのチームが、今回ついに接戦を制して見事にJFLに上がることになりました。
僕が時崎との縁、福島の皆さんとの縁、その中で、今までやってきた中で、何とか一緒にできないかと思ったもうひとつの理由は、こちらの鈴木さんが社長になられた、潰しちゃいかんと言ってなられたということは、自分で言うのも手前味噌ですけども、私自身も1999年の親会社撤退のあとに、本来は、わずかなショートリリーフで来たはずだったんですけども、今ではちょうど社長の中でもリーグで3番目に古くなりました。
そういう中でいうとやはり、サッカー界に救われたクラブの社長として、やはりサッカーで恩返しをしたい。サッカーで本当にピュアに一生懸命に何とか頑張ろうと思っているチームと一緒にやっていきたい、というふうに思ったのが大きなきっかけでございます。
同時に、Jリーグではクラブライセンス制が始まり、あるいは移籍金ルールが変わり、ものすごい勢いで環境が変わっています。その中で強化部、選手の頑張りがあり、我々は3度目の昇格を果たすことができたんですけども、今後さらに選手の育成等々を考えていったときに、やはりいろんな意味で前と同じやり方では難しいだろうということがありました。
鈴木社長からはありがとうございますと、救っていただいてみたいなことも言われますけど、そういうことではないんです。お互いに一緒に頑張って勝って、頑張って成長していこうということです。
詳しい話は竹鼻GMからございますが、うちの選手、昇格の柱になった菊池ですとか古林ですとか、やはりアカデミーで育った選手はすぐに他のチームに出してですね、外の世界を経験して戻ってきて今があります。そういう意味でいうと、こういったこともいい関係でできるんじゃないかなというふうに思っております。
これから「KIDS GUARD SHONAN」も、引き続きユナイテッドを中心に続けてまいりますし、もしあちらで子どもの育成上、相変わらず除染の問題でうまく試合ができないとか活動ができないということがあれば、我々で受け入れるための検討、あるいは活動をしていこうと思っています。
【福島ユナイテッドFC GM 竹鼻快氏】
皆さんこんにちは。GMの竹鼻です。
まずは、今回の提携ですが、基本的には一般の企業の事業提携と同じような作りで、お互いの強みとですね、それから弱み、この2つを合わせてよりいいものを作っていこうというのが基本的な考えです。
資料にありますが、クラブとかホームタウンを飛び越えて、互いのスケールメリット、それから規模を拡大して、各々さらなるクラブの価値の向上と発展を目指していく、というところが本丸です。
ベルマーレ側と福島ユナイテッドFC側、どちらも対比の図というものを左側と右側に載せてあります。ホームタウン、それからクラブの創立、会社設立、それと所属のリーグ、それぞれシチュエーションは違うんですけども、一つはベルマーレさんがクラブの創立、そして会社の設立含めて、歴史とノウハウを非常にお持ちであると。
また、福島ユナイテッドという若い、これからの、発展途上のクラブ。この2つが今どのような形でやっていくかというところで、真ん中のほうに、あくまでこれは一例になるかと思いますが、こういうことができるんじゃないか、それからこういうことをやっていきますというのを載せさせていただいてます。
営業・事業、それから強化、アカデミーと、大きく分けるとそういった事業の内容になります。営業・事業については、まずはスポンサーさんのところですが、相互にスポンサーの紹介というようなことができるんじゃないかなと。
まずはスポンサーのところですけれども、我々の業態から行くとホームタウンというところがマーケット、それからスポンサーの対象となってくるのですが、それをホームタウンを飛び越えた中でいろいろとお話ができるんじゃないかなというところで、一つ事業の提携の柱と考えております。例えば福島医療さん(※福島医療専門学校)というスポンサーが福島ユナイテッドのほうについていただいているんですけども、こちらはですね、数年前にベルマーレの眞壁社長のほうから福島にご紹介をいただいて、スポンサーをしていただいています。
というのも、ベルマーレのスポンサーさんであります横浜医専さんの関係でご紹介をいただいてスポンサーをしていただいているという経緯があります。
今後、ホームタウン内ではなくて、ホームタウンの外でPRをしたいという企業さんもたくさんあらわれると思います。例えばフロンターレさんに「ふくしまの米」ということでついていたスポンサーさんがいらっしゃいましたが、こちらのスポンサーさんのように、福島県内じゃなくて県外でPRがしたいんだというような企業さんがあったときに、例えば我々のほうから提案をして、ベルマーレの、J1の1万人以上集まるスタジアムでブースが出せますよ、というようなご案内ということもできるんじゃないかと。そういうようなところで、営業、要はスポンサーの部分で相互の乗り入れ、相互の紹介ということができるんじゃないかなと思います。
強化については、皆さんが非常にイメージがしやすいんじゃないかなと思います。
例えば地方のクラブで一つ問題があるのがスカウティングの部分になります。こちらのスカウティングの部分というのが、なかなか専任のスタッフを置くということが経費的にもかけられない中で、どうしてもちょっと後手、後手を踏んでしまうところがあります。
ベルマーレの場合は非常に優れたスカウティングのスタッフと、それから練習時には練習生をたくさん呼んでいますし、そのようなノウハウをお持ちなので、福島と提携することで、我々にとっては選手を獲得しやすくする。形がレンタルだったりご紹介をいただいたりということがあると思うんですけども。
逆にベルマーレには我々のほうでプレーする場というものを提供するというようなことで、お互いメリットがあるような形でやっていけるんじゃないかと思います。
今回、大阪桐蔭のほうから白井という選手がベルマーレと契約をして、早速ユナイテッドのほうにレンタルで参りますけども、こちらの選手が一つのいい例かなと思います。
それから、アカデミーのところですけれども、こちらも福島の場合、現状、ユースチームというものを持っておりません。今後もすぐにユースチームをスタートするというのは難しい状況ですが、こういった状況の中で、例えば福島のジュニアユースの選手がベルマーレのユースのほうに紹介ができるというような道があれば、福島の子どもたちにも非常に励みになると思います。また、ベルマーレのユースというのは、ご存知のようにユース出身がトップ選手に多いクラブでありますので、そういったところでお互いのメリットが持てるんじゃないかと。
さらに二次的要素というところで、観光とか復興支援とか、そういうところにつながっていくんじゃないかなと思います。
ざっとお話をさせてもらいましたけれども、一番のポイントは、お互いのクラブを、一緒にやることでスケールメリット、それを出して、規模感を大きくすること。簡単に言えば、例えば10億円規模のクラブと2億円規模のクラブが合わさることで、12億くらいの規模のことがいろいろやっていけるんじゃないかなというのが、主な我々の提携の根幹になっております。
【質疑応答】
Q:JリーグのチームとJFLのチームが提携するというのは、日本のサッカー史上でも初めての試みだと思うんですけども、将来的に両チームとしてどこまで踏み込んで関係を築いていくのか。選手のレンタル移籍という話もありましたけれども、将来的に福島ユナイテッドさんがJリーグに上がってもさらに続けていくのか?
A.眞壁:提携をするときに、常にやはりそういうことが問題というかテーマになると思うんですが、湘南ベルマーレをご取材いただいている方はよくご存知のように、うちの場合は考える前にやってみるということでまず提携を進めたということ。
当然、同一リーグで同じカテゴリーに入った場合は貸し借りもなかなか難しくなります。
ただ、ヨーロッパの前例を見てるとですね、その中で出てきたものに絶えず対処していく、という能力が一つのクラブマネジメントでありますので、例えばユナイテッドさんの目指していらっしゃるJリーグ入り、J2になれば、うちがもしJ2に落ちたらどうなるんだということもありますけども、先を想定しながらでは、動けないので、常にその部分は、できることできないことは、瞬時に嗅ぎ分けながらやっていきたいと思います。
そういう意味では、親会社がありませんので、僕と大倉がいいと言えばいい、2人で悪いといえば悪いという話なので、そういったことでしっかりやってきたいと思います。
また、トップのカテゴリーでは確かにそうですけども、やはり我々が一番やりたいのは子どもの部分でもあります。育成というのはよく3年と言いますけども、我々の経験で言うと、昨年、あれだけ躍動して昇格に貢献した選手たちはフジタ撤退のときに小学生だった、ジュニアの子です。やはり6年から8年かかる。そういう中で言うと、そういった中での協調関係ができればですね、カテゴリーが一緒であろうが上であろうが下であろうが、その次の話というは前向きにお互いできるんだと。そういうふうに考えて今回、この提携に調印をさせていただきました。
A.鈴木:私もまったく、眞壁社長と同じような考えを持ってるんですが、とくに今、福島の状況からしますと、今お話のあった子どもたちが、非常に夢とか希望を持ちづらい状況にあります。
外で思いっきり遊ぶこともできない。先日の新聞では、肥満傾向が非常に多くなってきたというような話もございます。そういう意味では、今我々のクラブで頑張っている子どもたち、あるいは福島の地域で頑張ろうとしている子どもたちを、ここでJ1のクラブとつながってるんだという、夢と希望をまず与えるっていうことが、僕は大事じゃないかなというふうな思いをしています。
これからどういう形になるか分かりませんが、今非常にJリーグが新しい風が吹いておりますし、どんな形で流れていくかもわかりません。ただ、我々としても非常に小さいクラブですし、地方として親会社がないようなクラブですので、理念として一緒にやっていけるというふうに確信をした上でこういう形になったわけでございます。是非、期待していただければなと思います。
取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行