ボイス
【ボイス:2024年11月1日】福田翔生選手
1年で積み上げたものを出すだけ
「とにかく初ゴールを決めたいって思ってたので。決めたらそれがいいきっかけとなって変わっていけると思っていました」
序盤は競争のなかで出場機会を得られない試合もあったが、6節でスタメン出場を掴むと、8節の横浜F・マリノス戦で途中出場し、念願の初ゴールを決める。
「とにかく集中していた覚えがあります。考えることはいろいろありますけど、考えすぎは自分に合ってないので、整理して入りました。『やっとJ1で点が取れた!』って思ったのは、すごく記憶にあります」
待ちに待ったJ1の舞台での得点。YS横浜で決めた得点とは、また違った感慨があった。しかも、1つゴールを決めたその後は、コンスタントに得点を重ねられるようになっていく。チームが求めているプレーと、福田選手自身が表現するプレーがマッチした証だろう。得点という結果を出せば、ポジション争いもさらに激しさを増していく。
「でも、ポジション争いについては、みんなすごくいい選手なので。勝ってやろうというのも何かちょっとおかしいし」
練習では切磋琢磨し、同じポジションを争うが、勝利を目指す気持ちは同じ。いざ試合に出れば協力し合うのが当然。ときにその協力がチームとして喉から手が出るほど欲しい得点につながる。例えば32節の鹿島アントラーズ戦では根本 凌選手とのコンビネーションで得点し、33節の東京ヴェルディ戦では鈴木 章斗選手の得点をアシスト。特に最近の試合では、前線の選手同士の息の合ったプレーがよく見られる。
「練習のときから話をしてますし、フォワードが決めるだけでチームはすごく上に向かって行くと思うから、もっと関係を良くすれば、いい結果につながる。そういうのはすごく意識してますね。自分のエゴだけじゃなくて、あと残り4試合ってなかで、どれだけ団結できるかっていうのはすごく大事だなって思うので、そういう面ではめっちゃ意識しています。自分のやりたいこともあるけど、今はどれだけ一つになれるかがすごく重要なことだと思うので。でも今、みんなでそれをすごく表現できていると思います」
得点という使命を背負うフォワードは、エゴイストであるべき、といった意見もあるが、同じチームにいる以上、そこを超えた関係性が必要だ。
「もちろん自分も(ゴールを)決めたいですけど、今は決めさせてあげたいっていう思いもすごくあるので、その『決めたい』『決めさせてあげたい』っていうバランスがすごく、この1年で成長してるなってめっちゃ実感できてます」
何人もいるフォワードのなかでも特に鈴木章斗選手は、2トップを組むこともあれば、スタメンを争うこともある年齢も近いライバルだ。
「でも、チームはみんなライバルなので。そのなかでも認め合う関係が一番チームを強くするなって思います、最近は。上辺だけじゃなくて、ピッチでどれだけ認めるか、認め合うかが強さだなと思います」
認める気持ちがパスを出す、あるいはパスが来ることを信じて走る、そんなプレーにつながっている。
「『決めたい』『決めさせたい』のバランスと、今シーズンの約1年を通して経験して積み上げてきたものが活きたパスだと思います」
フォワードのリーダー格として常に試合に出場してきたルキアン選手が怪我で離脱してることもあり、シーズン終盤にかけて若い2人の選手にかかる期待は大きすぎるほど大きい。
「若いとは思いますけど、でも世界的に見たら今は若い選手が活躍してるし、自分は若いとは思ってないので。ピッチに入れば年齢は関係ないですし。ピッチは、ただ戦って気持ちを表現する場だと思う。このチームに対してどれだけの思いを持てるか、その覚悟はあると思います」
また、残った試合は、対戦相手も厄介だ。しかし福田選手は、そこについては意に介さない。
「戦う相手はもう関係ないです。とにかくどれだけの試合をものにできるかだし、そう思ってやってます。多分みんなもそういう覚悟があるんじゃないかなと思います。とにかく先を見ずに目の前の1試合、次の1試合。サポーターには、残り4試合、本当に後押しして欲しいです。みんなでひとつになって戦いましょうって言いたいです」
取材・文 小西尚美
協力 森朝美