ボイス

【ボイス:2024年8月30日】鈴木淳之介選手

この活躍を支えるのは
2年間の回り道
 公式戦への出場はどんな形にしても成長につながっている。特に今回は、自身の成長とともにチームへ貢献していることも実感がある。それもここまで積み重ねた努力があればこそ、だ。
 高卒で加入したルーキーイヤーは、6月1日に開催された天皇杯2回戦はフル出場したが、それ以外の公式戦への出場はかなわず、天皇杯もJ1チームとの対戦となった3回戦ではリザーブ登録もなかった。

「プロに入って感じた一番の違いはスピード。かなり戸惑いました」

 とはいえ、足踏みばかりもしていられない。このスピードに慣れなければ、サッカー選手として生き残る道はない。そんな気持ちで練習に臨んだが、練習で得られるものには限界もあるのだろう。公式戦へと馳せる思いもあった。

「スピードは1年目で慣れましたけど、その慣れは練習とか練習試合での慣れ。(公式戦に)出たところで(いいプレーは)できないっていうのはわかっていたので、いかに早くそのレベルに追いつけるかをずっと考えて練習に取り組んでいました。試合に出たい気持ちがあっても、出て何ができるのかが自分の中では見えてなかったですね」

 最初のチャンスが訪れたのは、2年目のシーズン。Jリーグの開幕戦でリザーブに登録され、大量得点で勝ち越した時間帯に出場機会を掴んだ。

「初めてのJ1で開幕戦という舞台に立った。やってやろうという気持ちはありましたけど、それ以上に自分の体というか、心というか、緊張で高ぶりすぎて明らかにおかしかった。全然ダメでしたね。頭が真っ白になっちゃって。いつもと違う感覚でしたし、緊張して息が上がっちゃってとにかく走れなかった。明らかに経験が足りなかったなと思います」

 その後のリーグ戦への出場は、終盤になってから。ルヴァン杯や天皇杯で出場機会は得ていたが、自分自身が納得できるプレーはできなかった。

「とにかく試合に出て、早く自分のなかで納得するプレーがしたいという感覚だった。でも、出られても短い時間で、なかなか難しい時期でした。それでも徐々にですけど、自分のなかでも『やれる』という感覚が出てきたと思います。腐らずやっていたのが一番大きいかなと思います」

 はやる気持ちにままならない現実。それでも日々の切磋琢磨に手を抜くことはできない。「腐らずやった」という言葉が出たということは、つまりは腐りそうな気持ちが顔を覗かせることもあったということ。

「開幕戦には出られたけど、そこからまったく(リーグ戦に)絡めなかったし、公式戦でいいプレーというのは、明らかに出せてなかったから、悔しい気持ちがたくさんあって落ち込みました。でも、もう一回ちゃんと意識を上げてやらないと、本当にJ1では出られないという危機感もあった。ちゃんとやらなかったらそれが自分に返ってくると思って、無理矢理にでも意識してやっていました。練習で変な態度をとったりしないで、いつも通りちゃんとやり続けたことは、大きかったと思います」

 特に守備面は山口監督からも常に課題と指摘されていたが、何より鈴木選手自身、その自覚があったこともあって力を入れて取り組んだ。

「なかなかすぐに直せるわけではないので、映像を見返したりしながら日頃の練習から意識してやっていました」

 その結果、シーズン終盤に再びチャンスが巡ってくる。

「練習試合でもいいプレーができていたので、そろそろチャンスが来たら自分のプレーができるかなっていう感覚があった。ちょっとずつ自信がついてきたっていう感じですね」

 手応えを感じていたタイミングで試合出場のチャンスを掴んだ。この頃には、試合の中で自分自身が納得できるプレーを出せるようにもなった。チャンスを得ては躓いてと、そこに至るまでの道のりは険しかったが、その経験こそが現在の活躍を支えている。

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