ボイス
【ボイス:2024年4月23日】大野和成選手
悔しくてもやるべきことをやる
昨シーズンの経験が大野選手の「チームのために」という思いをいっそう強くした。
「前半のうまくいかないときは、正直みんなも迷いながらサッカーをしていた感じ。後半は、みんなのやるべきことが合致して、目指す方向が見えた。原点に戻って、それで結果も出てきたから『ああ、これでいいんだ』っていう。後半戦、最後の方はチームとしての方向性が定まった。今シーズンは、それが根本にある。だから失点することはありますけど、その方向性があるから盛り返す力はあるなって思う。だからこそやっぱり後ろは、0を継続できればもっと違う試合展開になるとも思う。その失敗を改善して、の繰り返しですね。チームとしても個人としても」
昨シーズン、チームが苦しいときに選手としての自分にできることは何か? を考えた。そして、それを考え続けると自分がチームに影響を与えられる存在なのだろうか? といったところに至る。そこを突き詰めたときに出場機会が増えていった。
「去年の前半戦、あんまり試合に出てなくて。みんなが苦しい思いをしてるのもわかってたけど、難しいんですよね、やっぱり出てないとあれこれ言っても…。だから自分が試合に出たときは、負けたら俺のせいでいいし、俺がなんとかするから、若い選手は思い切ってやってくれって思ってました。悩みながらプレーして自分の良さを出せないのが一番よくないと思ってたんで、思い切ってやってくれと。『ああしたらよかった』『こうしたらよかった』みたいなモヤモヤのなかでやるより、思い切ってプレーして『これがダメだったら次は改善しよう』と思った方が次に生きる。だから自分が出たときは、そういうマインドでやってほしいと思ってプレーしてました。責任は、僕とかベテランが負えばいい話だし、思い切ってプレーしたときのよさが勝利への一番の近道だと思っていたので」
振り返れば、昨シーズンに限らずチームが苦しいときほど出場機会を掴んでチームを支えるイメージがある大野選手。それはきっと多くの人が思うところであり、実は本人も自覚がある。
「そうやって自分の存在感を出せるのはありがたい。けど、そこは自分でも嫌なところ。難しい。いちサッカー選手としては、シーズンの最初から出たいから。出たいけど、出られなくてもチームがよくないときには何かをしないといけない年齢でもあるし。去年の後半戦は、湘南に長いこといて愛着もあるので、その思いをぶつける、注入すると思ってやってましたけどね。それこそ危機感ですよ、ズルズル行きそうって思ったから。もうちょっとのびのびやろうぜっていう思いもあったので、試合に出る機会があったら負けたらもう俺の責任でいいからって思ってました」
踏ん張った甲斐があって迎えた今シーズン。開幕戦の出場は逃したが、それでも早々の2節目でチャンスを掴んだ。
「チームとして難しい状況にならないように最初から行くことが大事だし、僕もいいときに出たいっていう気持ちもある。いや、サッカー選手としては最初から最後まで出たい。出て勝ちたい。今シーズンも最初から出たかった。開幕戦はここ数年、もうずっと出てないし。出るためにやってきたけど出られないのは実力不足。でもシーズンは長いし頑張る、その繰り返し。いろんな思いがあって、その思いのなかでやっている。試合に出られなくてもそこに固執せず、『自分が足りないから出られない』『じゃあ練習するしかない』『出たときにいいプレーができるように頑張る』と思って。試合に出られないからってふてくされる年齢は過ぎたので、悔しくてもやるしかない」
選手として達観したところもあるようだが、それもまた長く在籍しているチームへの愛着があればこそ。
「もし33歳くらいでこのチームに入った選手だったら、そうは考えないかもしれないですね。長いこといるからこそ自分は試合に出たいけど、出られなくてもチームは良くしないといけない、立場的に。そういう思いがミックスされて、今の僕がいます」
シーズンの深まりとともに、たくさんの試合でまだまだ成長し続けるベテランの姿が見られるはずだ。
取材・文 小西尚美
協力 森朝美