ボイス

【ボイス:2023年10月18日】田中聡選手


相手よりも「走る」「戦う」湘南スタンダード。その先を体現して、勝利を目指す

湘南から世界へ。
海外リーグに挑戦する選手も増えてきた。
田中聡選手もその1人だが、
結果として再び日本でプレーすることになった。
その経験はどんなものだったのか?
また、シーズン後半、重要な時期に帰還することを決めたその理由は?
チームが迎えた重要局面で巻き返しのピースとなるか、
今ある思いも合わせて聞いた。

チームを助けられる選手に
再びベルマーレで成長を期す
「ベルマーレにお世話になったし、チームに貢献して恩返しをしようという気持ちで帰ってきました」

 昨年の夏、ベルギー1部リーグのチーム、KVコルトレイクに期限付きで移籍した田中聡選手の復帰が発表されたのは、6月の初め。2023シーズンを戦うなか、序盤の勢いが徐々に影を潜めて黒星が先行する状況になった頃だった。

「レンタル期間が終了して買い取らないということが決まりました。ベルギー内でも移籍先を探したんですけど、オファーもなくてまた日本でサッカーしようということになって。でも、ベルマーレが順調だったら多分、他のチームに行ってたと思います。調子がいいチームには帰りづらいというか…。でも少し難しい状況になっていたので『助けたい』という気持ちで帰ってきました」

 「帰って、チームの力になろう」という気持ちに導いたのは、山口智監督。海外でのチャレンジに、少なからず挫折感を抱いて帰還した田中選手には「まだ早かった」という言葉だけでは割り切れない、ネガティブな思いもあった。その思いをしっかり受け止めてくれた。

「日本でのチームをまだ決めてなかったときにここ(馬入)にきて智さんとも話をして。『海外はどうだった?』みたいな話から、起用法の話とかもしていただいて。チームの力になってチームを勝たせる貢献を、今はまだできてないですけど、智さんからも求められました。それと自分は、海外で(試合に)出られなかったこともあって、自信がなくて、『自分じゃダメです』とか思ってしまうところがけっこうあるんですけど、智さんに『お前はそれを言い訳にしている』って言われて。それがすごい図星というか。そういうまだお前に足りてないところを指導したいし、ベルマーレで教える自信があるから『帰ってこい』と言われました。その言葉がけっこうグサっと刺さって、『確かにそうだな』『逃げてちゃダメだ』と思えたことが湘南に戻る決め手になりました。智さんは、本当に人をよく見ていて、海外で試合に出られなくて落ち込んでる自分に一番適した言葉をかけてくれました」

 ベルマーレでならもう一度、自分も成長できると確信し、そのうえでチームを助けようと決めて、帰ってきた。しかし、登録期間の関係から約2カ月は試合への出場は叶わない。練習を一緒にしながらも、少し客観的な立場でチームを見守ることとなった。その間、チームは思い通りの結果を出せない状況が続いた。

「全然勝てない時期、スタンドの上から見てるとけっこう簡単に見えるけど、やっぱりピッチに立つと難しい。サポーターや記者の方が見たら『何してるんだよ』になっちゃうと思いますけど。そこは選手が一番わかってるんで、『やっぱりサッカーって難しいな』みたいな感じで見てました。想像できるから『わかる、そのミス』みたいなものも見えるし。でも、言われるのが選手の宿命なので、しょうがないですし、そのなかで結果を出せる選手が上に行くと思うので、自分だったらどうするかなって考えながら見てました」

 奥野耕平選手や永木亮太選手(現・徳島ヴォルティス)といった同じポジションの選手を中心に試合を見た。

「耕平くんの立ち位置とかすごく勉強になりました。中間ポジションというか、選手と選手のつなぎ役みたいなポジションに入るので、そんなに目立つプレーではないですけど、耕平くんがいるとボールがしっかり回る。自分はけっこう動きすぎちゃうクセがあるんで、だいたい真ん中にいることも参考になりました。動くことがいいときもありますけど、裏目に出るときもけっこうあるので、ボールに寄りすぎないように意識したり。耕平くんはチームにとって大事な存在ですし、自分にはないものを持っているのでお手本にしています。亮太くんは、危ないところとかチャンスをすごくわかっているし、本当にサッカーを知っているなっていう感じ。なかなか試合に出られなかったので、対戦する形でサッカーすることが多かったんですけど、一緒にプレーするときは、自分がボールを持つといてほしいところにいてくれますし、アドバイスもすごくしてくれたので、めちゃくちゃ感謝してます」

 今後は、自分の良さを出しながら、出場できなかった期間に学んだ他の選手のいいところも糧に、勝利を目指す。

「状況にあった立ち位置だったり、ポジションだったりは、今もやろうとしているところ。でも、僕が出た試合はまだあまり勝ててないので、自分の実力のなさを感じてますし、助けたいと思って帰ってきたのに全然やれてないなっていう思いはあります」

 それでも内容に伴った結果を得られた試合が増えてきている。チームに勝ち点をもたらす巻き返しのピースとしての期待は大きい。

>世界に通じる武器を育てた タイミングの良い指導に感謝