ボイス

【ボイス:2023年9月13日】鈴木章斗選手

味方のために時間を作る
今一番の課題を克服したい
 昨シーズン終盤に求めたチャンスを今シーズン、最初に掴んだのは3月8日に行われたヴァン杯グループステージ浦和レッズ戦。後半、25分の時間をもらって出場した。

「今シーズンはリーグ戦に開幕から出たいと思ってキャンプもやってきて、でもやっぱり出られなくて。最初はルヴァンしかチャンスがなかったんですけど、とりあえず何も考えずに本当に気持ちだけでプレーしようって、そのときはピッチに入りました。がむしゃらに、ミスってもいいし、みたいな。そこで結果は出なかったですけど、いつも以上に強い気持ち、いつもとは違った気持ちがあった。それが監督に届いたかはわからないですけど」

 しかし、そこまでのリーグ戦ではリザーブ登録すらなかったにもかかわらず、浦和戦直後の3月12日に開催された京都サンガF.C.戦ではリザーブに登録され、後半には出場機会も得ている。また、その後のルヴァン杯グループステージは全試合出場、4月5日に開催された清水エスパルス戦ではスタメンを勝ち取り、今季公式戦初得点も挙げた。

「レッズ戦からはリーグ戦にもリザーブで入れて、またルヴァンに出て。そのときは点も決められて。いいタイミングで点を取れて、みたいな感じ。清水戦の得点はだいぶ大きかったなっていうのはあります」

 掴んだチャンスにしっかり得点という結果を出すことが、次のチャンスを呼ぶ。まずはルヴァン杯で、次は天皇杯。得点を決めた対戦相手を見ればカテゴリーが違うなど、今ひとつ満足できないところもあったが、むしろそこでしっかり結果を出したことが本命のリーグ戦出場へつながった。結果、9月2日開催の第26節鹿島アントラーズ戦でようやくリーグ戦2点目を挙げる。これは、4月15日開催の第8節横浜F・マリノス戦以来、約5ヵ月ぶり。しかもその間は、途中出場がほとんど。スタメン起用もその鹿島戦が13試合ぶりだった。この得点がきっとまた新しいチャンスにつながっていくだろう。

「2点目が遠いなって感じでした。フォワードとしての決定力もありますし、時間を作るっていうのも課題。途中出場が多いなかで、特に時間を作ることは今、一番の課題かなと思います」

 フォワードとして得点を求められるのは当然だが、今一番の課題と考えるているのは、自分の役割の一つである「時間を作る」プレー。それは、味方がより良い状況でプレーするために必要なことであり、巡り巡って自分のためでもある。だからこそ、試合に出場したときに、自分のなかで気になっているプレーを実践で試すことに意欲を燃やす。

「ボールを失う回数がとても多いし、そうなると選択肢が減ってしまう。よくワンタッチではたくことが多いんですけど、自分は途中出場でみんなが疲れている時間帯に、味方がしんどいなかでやってしまってるんで。そこで1回時間を作ることで味方がラクになるかなと思います。それに、自分たちの時間が長い方がやっぱり点が取れる。他にも課題はいっぱいあるんですけど、そこができれば何か変わるんじゃないかなって自分のなかでは思ってます。プレーの選択肢もそうですし、全体の幅も広がるかなって」

 このチャレンジは、鹿島戦のプレーでも見られた。大橋祐紀選手からのラストパスをバイタルエリアで受けて、シュートはゆるりと浮かした。決めることはできなかったが、自らの課題を克服するために選択したプレー。決めるべきシーンだったが、このチャレンジこそが今の鈴木選手らしさとも言える。

「正直、成長を意識するっていうより、試合に出たい欲とか、負けたくない気持ちとかの方が強いですね。うまくなりたいっていう思いもあるんですけど、試合に出て、その試合でできなかったプレーや、あとで考えて、こうした方が良かったというプレーを次の試合で1回やってみたいとか、こういうプレーに1回チャレンジしてみたいとか、そういう欲が強いです」

 また、高校時代は相手ディフェンダーを背負うなど、前線で身体を張るプレーはむしろ得意としていたが、今は、できていたはずのことができずに戸惑うことが多い。それは、「プロの世界のレベルの高さ」のなかでのプレーだから。

「やっぱり身体が全然違いますし、自分ではキープできているつもりでも足が出てきたりする。すごいところから足が出てくるんですよね、『えっ』って思うんですけど。難しいなと思います」

 これまでのプレーが通用しないことを経験して、自分に対する見方も変わり、課題克服もこれまでとは違ったチャレンジを考えるようになった。

「1回ボディフェイントを入れて逆とかっていうのをやらないといけないと思ったんで、次の試合でやってみようとか。やっぱり練習じゃ味わえない、リーグ戦の強い強度のなかでできることが成長につながっていると思います」

 一つひとつ積み重ねている課題へのチャレンジ。今日の経験を整理して、考えて、次の試合で実際にやってみる。これを繰り返している。これに加えて取り組んでいるのがフィジカルの強化。こちらもまた、一朝一夕ではかなわない。

「筋力をもっと上げれば対応できる可能性はあるかなと思いますけど、まだまだ全然。去年1年間結構やってきたので、去年よりはゴツくはなってるんですけど、それでも全然足りないなっていうのは思います」

 筋力を鍛えつつ、新たなプレーにチャレンジして、そのチャレンジを得点と勝利に結びつける。鹿島戦の得点は、地道に続けた努力が実ったものだった。

>プロ選手として生き残るために技術をもっと磨きたい