ボイス
【ボイス:2023年5月11日】平岡大陽選手
気づきをくれたスカウトの言葉
「幼稚園や小学校の頃はチームで一番うまいぐらいだったから、ドリブルでバーっと、それは攻撃しますよね。だから攻撃はできると思っていたけど、上には上がいたっていうことをだんだん知って、中学の頃は自分には特徴がないと思ってました。高校もそうだけど。特徴ないけど頑張るかーと思いながらサッカー頑張ってたんですよね」
実は、育成年代の頃にもまた、プロになってからとは違った理由から自分の特徴を見失ってしまった時期があった。それは成長期特有のものとも言える。同年代のレベルの高い選手に囲まれて、自分より技術が高い選手やフィジカルに恵まれた選手と出会うたびに、自分の特徴的なプレーから「得意」という思いを手放していた。
「それでもセレッソのジュニアユースも結構前からプレスをはめるから、みんなちょっとしんどい。けど、みんなが行かへんようなとこも、俺はもうほんまきついけど行ってたし、小学校のときもみんながサボりがちな1対1の守備も、この1回のプレス、行かんこともできるけど、それをやったら後々それが塵も積もって自分に返ってくるぞって、なんかこう、思ってた。真面目やから(笑)。小学校の守備とか、中学のファーストアプローチとか、高校のときも同じようなことを考えて、自分は特徴がないなと思いながら、一個一個は人よりちょっとこだわってやろうと思っていたのが今、一つ特徴になったのかなと思う。やっぱり全部繋がっているなというのは思います」
「このプレーが得意」「ここが自分の強さ」という自信を持てない分、自分ができること、課されたタスクにこだわってプレーした育成年代。ベルマーレのスカウト担当スタッフとの出会いもまた、平岡選手の今につながる特徴を改めて掘り起こし、輝かせるものとなっていた。
「運動量は確かにあって、高校でも『大陽、めっちゃ走るやん』みたいなことはチームメイトにも言われていたんですけど、守備とか球際の強さとかを見いだしてくれたのは、湘南のスカウトの方。初めてしゃべったときに、『守備がいいよね』って言われて、『ん、守備?』とびっくりして僕。でも小学校の頃は確かに『ちょっと守備得意やな』と思っていました。けど、中学校に上がったら圧倒的に体格差があったて、140cmのやつが170cmのやつに球際で勝てるわけがない。で、守備は無理なんやと思った時期があって。高校もその流れで、守備が得意と思ったのは自分の思い込みだと思っていました。それが、ちょうど身体が成長してきたタイミングでスカウトの方が見てくれて、『守備、いいよね』って言ってくれたんです。そこから『俺、守備行ける』と思って、もう1回磨き始めた。メンタリティというのは、本当に大きいと思います」
平岡選手自身が自分の特徴として挙げる思い切りの良いプレス。今シーズンはさらにその強度が増しているように見える。そのことを問うと、その理由を紐解いてくれた。
「W杯イヤーでオフが2カ月あったので、結構筋肉を大きくしたんです。メディカルの方に協力してもらってメニューを作ってもらったりして。このオフは、本当にちゃんとこなしたので、キャンプのときはちょっと重いなと思ったけど、最近は動けるようになってきている。プラス、周りの人が『球際、強くなったね』って言ってくれるので、そういうのでも『自分、やれるな』って思えてるのかなと思います」
まずは自分で努力して。そのうえに人からの評価も自信の支えに。今シーズンは、いい循環を手にしている。そうした経験を経た今、自分が見て欲しいと思うプレーはというと、今だからこそむしろ「ない」。
「特にどのプレーというよりは、俺が球際も行けるし、走るし、攻撃参加もできるしっていう、試合を通して全体を見て評価して欲しいなっていうのはあります」
攻守共に頑張れる。それこそが平岡選手の何よりの特徴といえそうだ。