ボイス
【ボイス:2022年9月1日】杉岡大暉選手
プレーの質にこだわりたい
「でも、自分の中で確かな自信というのは、湘南にいたときはまだなくて。そのときに鹿島から話をもらって、やっぱり鹿島は日本のトップクラブですし、そこで試合に出てレギュラーを取ることによって自分の自信になるんじゃないかなと感じて、チャレンジしました」
何かをできる自信があったというよりは、自信が持てる何かを探しての移籍だった。とはいえそれもまた、前に進むための選択といえる。
「本当に僕、『今考えたら』ですけど、勢いでやってましたし、確信的な自信は掴んでなかった。その『勢い』が良さでもあったし、それでゴールも取っていたし、そういう意味で印象に残るプレーは多かったとは思うんですけど。ただ、ストライカーであればゴールを決めていればいいと思うんですけど、僕の中ではそれ以外のプレーにこだわりを持ってますし、ポジション的にもそうだと思うので、そういうところを見たときに、『考えてはやれてないな』という感覚があったというか。勢いでやるのもいいんですけど、僕の中で『それだけじゃない』というものが欲しかった。そういったプレーが鹿島でできたら『確かな自信になるだろうな』という思いもあってチャレンジしたいと強く思いました」
勢いで決めたゴールではなく、意図したプレーを実らせたい。自分のポジションに必要なプレーについて考えるとそういう欲が出る。しかし、どうすればそれができるのかはわからないままにプレーしていた。
「難しいですけど、考えて計画的に意図的に、しっかりいいプレーというか、そういうのを増やしていきたいというふうには思っていたし、それが意図的だからこそどのレベルでもできることだと思うので、勢いでプレーして『できた』『できない』ではなく、『相手を見て』『意図的に』できる選手になりたいし、そうじゃないとこの先、生き残れないんじゃないかと思ってました」
調子が良ければ勢いにも乗れる。しかし、いつもそうとは限らない。それでは選手として信頼されるのは難しいうえに、何よりも自分自身が不安だった。
「周りから見たら『勢い』が良さだし、僕自身もそう思うし、それでその先のサッカー人生を行ける人もいると思いますけど、僕の性格的にずっとそれでは嫌だなと思って、コーチとかに相談していた記憶がありますね。僕の中では、できていることが『たまたま感』が強かった。それが不安でしたね。それが『出せなかったら』という気持ちにすごくなってました」
しかし、新しいチームへ移れば、1からの競争にチャレンジするところから始まる。自分に確信が持てない状態で移籍して、何もないところからアピールするのは難しかった。
「ガンガン行く勢いのあるところを認めて採ってくれたのに、そういうメンタル状況で行っちゃったのもあって、自信を持ってやれなかったというか。周りから評価されていた良さはだいぶ消えてましたし、自分でもいいプレーはできてなかったと思います。周りのレベルも高いし、『いいプレーをしているのに、なんで出してくれないんだ』というよりは、自分でも『これじゃあ出られないな』というふうには、正直感じてました」
それでも、まったく違う環境、指導者、チームメイトに囲まれて過ごした1年半の学びは強烈なものがあった。
「誰も僕のプレースタイルとか知らないから自分で示していかなきゃいけない。人間関係を含めてすべて1からやらなきゃいけない。練習では、どうやったらうまく行くだろうということを常に考えてやってましたし、その積み重ねが湘南に戻る前くらいから自分の中で手応えあるプレーができるようになっていて。鹿島の練習でそれができるようになっていったのは、その中での収穫かなとは思います。本当に濃い、苦しいけど、濃い時間ではありました」
何かを掴みかけたタイミングでのベルマーレへの期限付き移籍。
「今もそんなにできてるわけじゃないですけど、自分の中ですごく手応えのあるプレーが増えてきた中でこっちに戻ってきて、システム的な問題もありますけど、3バックの後ろをやることによって自分の中ですごく余裕ができました。相手を見てしっかりプレーを選択できるように、そこに関してはいつの間にかすごく景色が変わったなというふうに思いますね」
さらに代表で新しい刺激を受けて、これから強化すべきことも見つかった。
「今は主に自分がボールを持ったときですけど、相手を見てしっかり選択できるようになっていったという感じ。その状況を常にどう作るかはは今の課題というか、やってる最中っていう感じです」
鹿島で、代表で、そしてベルマーレで。すべての経験が成長の糧となっている。
「今、すごく充実してプレーできてますね」
やるべきことがわかれば、そこにトライしていくだけ。納得の表情に、掴んだ手応えが宿っていた。