ボイス

【ボイス:2022年7月1日】大岩一貴選手

理想のキャプテン像は
選手時代の智さん
 タイトに組まれた試合日程を戦い抜くためか、試合出場のメンバーはきっちり固定されることなく、多くの選手が起用される中、ほとんどの試合でスターティングイレブンに名を連ねている。監督からの信頼の厚さを感じさせるが、本人としてはキャプテンに指名されたことは意外だったようだ。

「びっくりしました。(ベガルタ)仙台でもやっていたけど、湘南でキャプテンな感じのキャラクターだったとは思わないので。みんなを引っ張ってたわけじゃないと思うし、割と自分に矢印を向けてやっていた2年間というイメージがあったので。キャプテンをやるとは思っても考えてもいなかったというか」

 これまでいたチームとはまた違った環境で、自分自身に矢印を向けて過ごしてきた結果がキャプテンだった。自分では意外でも、断る理由はない。ましてや山口監督からの指名となれば、なおさら。大岩選手が描くキャプテン像には、山口監督の選手時代の姿がある。

「常に試合に出て活躍して、苦しい時に点を取ってというのは究極の理想ではありますね。練習もフルにやって、何かしら違いを見せられて。ただ、そんなに甘くないし、自分が飛び抜けているわけでもないですし。じゃあ何で補っていくのかっていうところですね。試行錯誤しながら、良い影響を与えられるように」

 飛び抜けていない分、補うものが必要だと考えている。それは例えば、練習に向かう姿勢や苦しいときにポジティブな声をかけていくこと。

「練習に向かう姿勢だったり、苦しいときにしゃべることだったり、そういうところですね。チームが良くないときに何かを変えられる、変えようとする、そういうところで補えたらなと思います。智さんがそうだった、キャプテンだった時の智さんを見ているんで。1番の理想は、智さんみたいなキャプテンですよね」

 大岩選手の記憶に残る、選手時代、キャプテンとしてチームを率いた山口監督の姿。

「実際、プレーでも飛び抜けたところがあったので、誰もがキャプテンぽいなと思っていたと思います。試合で言えば、苦しいときに点を取っていたと思うし、みんな、何かあったら智さんに聞くほど誰からも慕われていたし。試合中も、監督以上に影響力があった。自分の中でもちょっと理想が高すぎるなって思いますけど、キャプテンの理想像は智さんにありますね」

 そろそろルーキー時代に出会った山口監督と同じ年になる。

「来年くらいですかね。目指しているのは、そこだけど、僕に、じゃあそこまでの技術があるのかっていうと、また違うところ。智さんは僕から見て、すべての言動がプレーと繋がっていたから。選手としてもっと成長しなきゃいけないし、やっぱりいろんなものをプラスアルファでやらないと近づけないなと思ってやってます。あの頃の智さんは完成されていたので、本当にまだまだだなと思うけど、逆にいうと僕にはまだ若い感じがあると思うので(笑)、その分伸び代があると思って、そこはプラスに考えたいです」

 自分の中に理想を刻み込んだ人と、立場を変えて再び出会い、同じ目標を持って過ごす日々を送っている。

「ずっと監督みたいな人が本当の監督になったという感じ。いろいろ考えるとすごいことだなと思うし、なかなかないことだと思うし、ラッキーだと思う」

 大岩選手のサッカー人生に影響を与えた人は、他にもいる。公式サイトの個人ページにある50の質問の中で、「影響を受けた選手」の欄に、昨シーズンで選手を引退し、今シーズンからベルマーレアンバサダーに就任した石原直樹さんの名前がある。前チームの仙台でチームメイトだった期間に大きな影響を受けた。

「なんて言うんだろう、サッカーを教えてもらったというか。『サッカーってこういうものだよ』というのを具体的に教えてくれた人。今まで何も考えずにやってたんだなっていうのを感じさせてくれた人ですね、ナオさんは」

 例えば「前を見なきゃいけない」「自分のポジションならどう動いたらいいか」そんなことを具体的に話したという。

「変わったのは考え方というか、思考。思考が変わればプレーも変えられるし、そこで必要な技術をつけなきゃいけないとなると思うし。結局は思考だと思うので。いろんな考え方を学ぶ必要が自分にはあると思うし、それを本当に言語化して伝えてくれたのがナオさんでした」

 プロサッカー人生のスタートで出会った山口監督も同様の影響を与えてくれた人。再び山口監督の元でサッカーをすることで、新たな刺激を感じている。

「ナオさんと出会って考えるようになったけど、智さんが監督になって、改めて、また何も考えないでサッカーしてたんだなっていうことに気づかされました」

 この2人に加えて、今年からコーチングスタッフに加わった古賀正紘コーチも、大岩選手にとってなくてはならない人。

「僕、名古屋生まれなので、古賀さんは(名古屋)グランパスに在籍していたときの、もうスターですよね。特に自分にとっては。今、古賀さんがいる、智さん、ナオさんもいて、すごく充実しているというか、成長もできると思うし、楽しい。少し緊張もするっていう日々を過ごせていると思います。ありがたいですね」

 最高の人間関係のなか、頭をフル回転させて自身とチームの向上に挑む。11年目のシーズンも、まだまだ伸びしろでいっぱいだ。

取材・文 小西尚美
協力 森朝美