ボイス

【ボイス:2021年6月18日】茨田陽生選手

去年の経験を活かしてこそ
チームとしての成長を感じるシーズン

 約2ヶ月の中断期間を挟む今シーズン。そろそろ中盤戦へ入ろうかというところまで試合を重ねてきている。チームの戦いぶりはといえば、結果としては引き分けが多く、1つ勝ってもその勝利を次に繋げられないもどかしさがある。しかし、どの試合も選手たち自身がめざすべきところを理解していることがわかる姿勢で臨み、未来につながる兆しが見える。選手自身それを手応えとしても感じている。

「引き分けが続いているときは、『なかなか勝てないな』っていう印象でしたけど、勝ちを1個積むことによって今までの引き分けの価値がだいぶ上がったんじゃないかというふうに思っていて。勝ち切れなかったり、逆に追いついた試合があったり、そうした試合で積んだ勝点1も、大きな積み上げだったと思います。流れも良かったし、湘南の特徴の守備の部分でも良かったですし、途中から出てきた選手が最後にしっかりと仕事をして、2対0で終えたというのは、非常にいい形だったんじゃないかと思います」

 これは、カップ戦を含めて11試合負けなし、6試合引き分けが続いたあとに勝利した大分トリニータ戦について茨田選手が語った言葉。そこには、チームで積み重ねてきた時間が見える。

「僕自身、Jリーグのほうではスタメンで出ることがないんですけど、でもルヴァンでスタメンで出て、いい形の試合運びを見せられていると思うので、ルヴァンに出た選手ががんばれば、Jリーグに出ている選手も感化されていいプレーをしなきゃっていうふうに、いい循環が生まれているんじゃないかと思います」

 チームにいる全員が刺激しあう関係にある。ベルマーレで過ごす2年目のシーズンを迎えた茨田選手は、こうしたところに昨シーズンからの成長を感じている。

「去年の反省を生かしているところと考えると、チームがどれだけ早い段階で一体感を持ってプレーできるかっていうところに尽きると思います。今年に関しては、早い段階からチームの目標に掲げている「一」、「One」というところもありますし、そういうところをみんなが心がけて、チームを一つにしようっていうのを各選手が心がけてやっていると思う。ピッチに立ってもキャプテンだけじゃなくて全員が声をかけあいながらプレーをしている。チームを一つにまとめようという一人ひとりの意識が高いから、いいサッカーが生まれているんじゃないかと思います」

 結果的に最下位となった昨シーズン。その経験があるからこその今シーズンの成長だ。

「去年は、僕自身も湘南に来て初めてのシーズンだったし、選手が半分近く入れ替わっている部分もそうだし、いろいろな「新しい」という言葉が一番合うような去年だったので、僕自身もチーム全員がまとまったという瞬間をあまり感じ取ることができなかった。だからこそ今年は、チーム全員、出ている選手も出ていない選手も一丸となって戦うっていうのが大事なのかなと思いますね」

 パスでチームにリズムをもたらし、攻撃のチャンスを作ることを得意としている。話のなかに「チーム」という言葉が多く登場する。チームを思う気持ちは人一倍強い。

「僕は個の能力で点を取ったり、局面を打開する能力が長けている選手ではない。周りの選手のサポートがあって自分の特徴が生きると思っています。常に周りの選手を含めてチーム全体で一つになることで自分の力が発揮されると思うので。チームのために自分が何をしなくちゃいけないのかっていうのを考えながら、いつもプレーしています」

 チームを優先する姿勢は、目標を立てるときも変わらない。

「そのときそのときでゴールを取りたいという気分にもなりますし、チームのために守備で貢献しなきゃいけないっていう場面もありますし、だから何かこれっていう目標は立てないですね。それよりはやっぱりチームのためにっていうイメージが強いかなと思います。だから個人的な目標というよりは、チームの力になるためにっていうところで、しっかりとJ1に生き残るために僕自身がチームの力になって、そこは成し遂げたいなと思っています」

 今シーズンは、3人のキャプテンが並び立つチーム体制に変わった。

「去年からの継続というなかで反省を生かして、どの選手もキャプテンのように声かけだったりを意識していると思う。そういうことからも3人キャプテンというのは、チームをまとめる上で、非常にいいんじゃないかなと思います」

 得点を決めるとベンチに向かう選手も多い。よろこびを分かち合う姿にチームの一体感が表れている。

「一人ひとりが意識しているから外から見ていただいている方にもチームがまとまって見えていると思いますし、それは非常にいいことだと思います。選手も去年よりもしっかりとチームとしてサッカーができていると思いますし。去年の経験を活かしてこれからもやっていきたいと思います」

 チームが一丸となって前に進んでいる。あとはさらに良い結果を出すまで突き詰めたいところ。チームとしても個人としても、ここからの成長に期待したい。

取材・文 小西尚美
協力 森朝美