ボイス
【ボイス:2021年6月18日】茨田陽生選手
移籍に込めた決意
柏レイソルのアカデミーに小学校4年生から在籍し、トップチームへ昇格してプロへ。8シーズンを過ごして大宮アルディージャで3シーズンを経て、ベルマーレに移籍した。チームとしては3つ目。選手にとって移籍とは、どんなものなのだろうか?
「勇気はいりますね、やっぱり。自分自身を一から知ってもらわなきゃいけないですし、自分の特徴をしっかりピッチで表現して、コミュニケーションをとってやっていかなきゃいけないということもあるので、勇気も体力も必要なことだと思っています」
勇気も体力も必要。それでも移籍を考えたのには、理由がある。
「僕自身、守備に課題が多いので、この課題を改善することができれば自分は成長できると考えているときに湘南ベルマーレからオファーをいただいて。ぴったり合うクラブだと思って、移籍を考えました」
外から見ていたベルマーレのイメージは「走る、90分間走り切る」というもの。その部分でも勇気が必要だった。
「そこの自信もなかったので、ある意味、僕にとって挑戦なのかなと思いながらの移籍でした。想像以上に走りますし、守備のところで走るということの強度がとても高いとわかったので、もっともっとやっていかなきゃいけない。でも自分の成長に非常につながる、そんなチームだなと思っています」
茨田選手が課題と考えている部分は、ことごとくベルマーレのサッカーの特徴を構成するものでもある。
「湘南というチームは、外から見ていたイメージと変わりなく、その感覚で1年目を過ごせましたし、そこを改善しなきゃ自分にとっても成長はないと思っていたので、まだ修行中ですけど頑張っているかなと思います(笑)。楽しみながら、自分の成長を感じながら、自分の弱点を見つけながら、改善しながら、いろいろ考えながらサッカーをできているかなと思います」
ベルマーレで新たに見つけた弱点とは?
「細かいところでいうと、付いていくところが今のところなかなか。一歩遅れたり、相手に先手を取られたり。ワンツーではたかれるところで一歩遅かったり。一瞬ボールを見てしまって、自分のマークの選手に走られてしまうっていうところは、意識してプレーしてますけどなかなか改善できないですし、相手に上手くやられてしまうなというのが多いですね」
育ったサッカー観の違いがプレーの選択に表れている。
「非常に大きいと思います。僕自身は(吉田)達磨さん(現・シンガポール代表監督)のサッカーで育って、それでプロになったと思っているので、その概念からちょっと違う路線なので、なかなかこう、自分に染み付いていないプレーはとっさに出ないなと思いますね」
移籍先は、自分のサッカー観やプレースタイルを活かすという条件で選択することもできる。その逆を選んだというわけだ。
「自分の特徴を必要としてくれるチーム、活かせるチームっていうのは自分にとってプラスだと思いますし、長所がどんどん伸びていくと思います。僕の選択は、自分のイメージでは、縦に長くじゃなく横に広く成長できるんじゃないかなというふうに思います。長所だけを伸ばすって考えると、自分の中では縦にバーンと伸びるイメージがありますけど、長所じゃない部分も培っていければ、縦にも伸びますけど横にこう太く、幹のようになっていくんじゃないかなと思いながらプレーしています」
それは、サッカープレーヤーとしてだけではなく、人間としての成長も考えての選択。
「選手としての幅にもつながりますし、僕自身、30歳になったので人としての成長も考えた方がいい年齢。移籍をすることで自分のサッカー観とは違うサッカーを体験して、それらを自分の中でもう一度考えて、改めてどう表現するかということがやれている。人間としての成長にもつながっているのでは、と思います」
移籍は選手だけの思いでは成立しない。茨田選手が言うところの、「ちょっと違う概念」のサッカー観も今のベルマーレに必要なもの。それをより良い形で昇華できれば、チームの進化も加速するはずだ。
「柏では基本的にコントロール、パスっていう基礎の部分がしっかりしている選手が多くいたんですけど、湘南に来て、走るスタイルに変わって、タッチとパスのところ、コントロールとパスのところがもっと上手くなったらもっと成長する選手がいっぱいいると思います。そういう選手を見て、僕自身はシャイなのであんまりしゃべる機会はないですけど、アドバイスができればと思います。湘南の若手は、話すと真面目に聞いてくれますし、質問があったら話しかけてくれるし、向上心もあって、将来期待できる選手が多い。でも僕も言うのがたまーになんで、これからもう少し声をかけられたらなと思っています」
そこはシャイを通さず、遠慮せずに声をかけて欲しいところ。お互い自分にないものを持つ者同士、ここでも一丸となるところが見たい。その結果起こる化学反応こそがチームの成長の鍵を握っているのではないだろうか?