ボイス
【ボイス:2019年1月24日】島村毅
楽しみの一つ
「おかげさまで、引退してからたくさんの人から誘っていただいて。12月は31日では足りないってくらいで、夜と昼と別に予定を立てて人と会ってました。
サッカーを通して本当にいい友達だったり、先輩だったりに恵まれて、大好きな人が増えて。このペースで友人が増えたら、1年毎日誰かと会っても足りないくらい。でもうれしいです。本当にいい人が多くて。やっぱりサッカーが結びつけてくれたと思うんで、サッカーにも感謝したいです」
サッカーが結んでくれた大切なものにもう一つ、サポーターとの縁がある。
「みんなが僕やチームメイトの成長を見届けてくれていると思うんですけど、逆に僕も見てますよって言いたいです。最初に来てくれた頃は独身だった女性が結婚して、子どもを連れてきてくれたり、その子が成長していったり。ちっちゃかった男の子、昔よく手を骨折してた子が今、サポーターの中心ですごい声を出してくれてたり。今度就職するって報告してくれて、『マジか』みたいな。ちっちゃかった子が自分でピンクの虎のTシャツを作って着て来てくれたり、虎のリュックを背負って応援してくれてた女の子がもう中学生になったりとか。
埼玉で妹がカフェをやっているんですけど、湘南のサポーターの皆さんが通ってくれたり、忘年会とか新年会とかしてくれたり。そんなうれしいことないですよね、僕だけじゃなくて家族のことを気にかけてくれたり、犬のガブリエルのこともみんなが気にかけてくれたり。ゲーフラ作ってくれたり。
こんな大人数と関われる職業ってなかなかないと思うんです。こうしていろんな人の人生に関われたのは、サッカーだったり、ベルマーレだったりのおかげ。サポーターとの距離も近くて、本当に感謝してますし、幸せなことだなって思います」
サポーターとの距離が近いのは、馬入グラウンドならでは。とはいえ、すっとこれだけのサポーターの方の例が出てくるのは、島村選手の人柄があればこそ。その人柄がまた、たくさんの人の輪に繋がり、交流が深まってきたと言えるだろう。
「10年も居ると、僕もサポーターの方の成長を見てきたなって思います。僕だけが主人公じゃなくてね、こっちだって見てますからねっていうこと。サポーターの皆さんの成長を見届けてこられた。
馬入でサポーターの方と話をするのは、もう日常です。たまに、すごく丁寧に対応してるねみたいなことを言ってもらえるんですけど、知り合いっていったら違うかもしれないですけど、知り合いが来たらそりゃしゃべるでしょ、みたいなことです。ちっちゃい子からおじいちゃん、おばあちゃんまで、話して帰るのが当たり前になって、すごく楽しかったなって思う。
選手を引退すると、それがなくなるのがやっぱり寂しいなって思います」
移籍加入した選手が驚くこともあるという馬入グラウンドならではのサポーターとの距離感だが、島村選手はしっかりとその近さを楽しんできた。
「病気になってしまった子がいたんですけど、その子が入院するときに説明を受けて質問ある? と言われたときに、『ベルマーレの試合はいつ見に行けますか?』って質問したって聞いて、自分も頑張らなきゃって思えたし、サッカーの力で、病気も直すような力を与えたいとも思った。逆に、何かやってやろうというパワーをもらいながらやってこられたと思う。だからといってうまくいかないこともありましたけど。でも、その子だけじゃなくて、そうやって応援してくれる人がいるということを全選手感じながらやっていってほしいなという思いはあります」
これからは、こうした出会いに感謝しつつ、クラブへの恩返しの気持ちも込めてスタッフとして働く。
「こんなに世話になったクラブだし、またこうやって働く機会を与えてくれるって本当に幸せなことだと思うし、だからこそ頑張ろうと思えるんで、本当に幸せなことだと思います。まぁあれだけ盛大にお別れしたのに、まだ全然いるんだっていう(笑)。
現役時代は、チームで一番走れなかったですけど、これからは『営業乃虎』として誰よりも走り回らなきゃって思ってます。今までちゃんと走れなかった分、走ろうと思います」
すでに新たな目標も定まっている。
「裏方かもしれないですけど、ベルマーレをもっとすごいクラブにしていきたいという夢があるんで。僕は間に合わなかったですけど、サッカー専用スタジアムでACL(AFC(アジアサッカー連盟)チャンピオンズリーグ)とか戦えるようになったら涙出ちゃうなって思いながら。そこに貢献できたらいいなと思って、そんな夢を持ちながら頑張っていこうと思います」
ここ一番の勝負強さは、島村選手の魅力の一つ。これからは、営業畑というピッチで結果を追い求めていく。
取材・文 小西尚美
協力 森朝美