ボイス
【ボイス:2019年1月24日】島村毅
選手一人ひとりの努力と成長
「もちろん200試合20ゴールを達成して、そのまま上昇していこうと思ってましたよ」
混戦のリーグ戦は、中位から下位を争う難しい状況が続いたが、ルヴァンカップはグループリーグを勝ち抜き、クラブとしても22年ぶりの準決勝進出、クラブ史上初めての決勝、そして優勝という快挙を成し遂げた。しかし、躍動するチームと同じペースで歩めたかというと、少し無理があるかもしれない。それでも、「いつかのその時」に備えて怠らずに準備した自負はある。
「湘南には10年いましたけど、レギュラー取れたシーズンなんて正直なかったんで。大学の4年間もスーパーサブ。だけど出たら点を取るという感じだったんで、プロになってもまったく変わらない。練習で頑張っていい準備をして、試合に出た時に結果を出す。それに尽きるので、昨年も変わらずやってきました。
試合に出られない時間が長くても、久しぶりに出たときに活躍すれば『やっぱりあいつすごいな』って思ってもらえるし。その時間が僕にパワーを与えてくれた。それで試合に出るとうまいこと点が取れたのかなと思います」
ルヴァンカップは、グループリーグからたくさんの選手が出場し、まさにチーム一丸となって戦ってきた結果が実を結んだ優勝だ。決勝のピッチに立てた選手、立てなかった選手はいるが、それでも総力戦で手にしたタイトルといえる。
「準決勝は、ベンチに入れてもらったんで、もちろん決勝もっていう気持ちでした。フォワードにけが人が多かったこともあって、多分フォワードで考えてもらっていたと思うんですけど。やっぱりね、決勝で点を取ることを夢見てましたよ。そこはすごく目標にしてたし、『俺、点取っちゃうんじゃないかな』みたいなワクワク感もあったので、メンバーに入れなかったときは、すごく悔しかったです。だけど、あのスタジアムの雰囲気と選手の顔を見てたら、やっぱり勝って欲しいと思いましたし、終わってから選手のことも当然そうなんだけど、スタッフのすごくうれしそうな顔を見たら、メンバーに入れなかった悔しさなんて吹っ飛びましたし、泣けるくらい良かったなって思いました」
J1へ昇格すること自体がクラブとしての目標だった頃から在籍し、11年ぶりの昇格も1年ごとの昇降格も経験している。チームの歴史と自分の経験が重なる選手ならではの喜びでもある。
「クラブもJ2に10年いて大変だったと思いますけど、僕も最初の頃はそれどころじゃない。試合には出られないし、ポジションも変わってがむしゃらにやるだけ。公式戦は、スタジアムやテレビで『観るもの』だった。応援するだけ。
2年目にソリさん(反町康治現・松本山雅FC監督)になって試合に出させてもらえるようになって、51試合戦って、昇格して、J1で戦う権利を得て。初めてのJ1、人生変わるって思って、憧れの舞台でしっかり成長してブレイクするんだと思い描いていたら、木っ端微塵にされて。どこまでやれるんだろうという思いでいたけど、どこまでもやれなかった。『全然違うな』って、そこで初めてJ1との距離が測れた。
それで徳島(ヴォルティス)に行って、帰ってきて、曺(貴裁監督)さんが監督になって、また競争が始まって。今度は、若い力ですごい勢いで昇格したり、落ちちゃったりしたけど、その過程でみんながすごく成長して。チームは、上がったり落ちたりしましたけど、自分自身がすごく成長しているのを感じられた。良いときも悪いときもJ1との距離を常に感じながらやれるようになっていった。だから何が足りないのかとも向き合って頑張ってこられた。チームが強くなるにつれて、若い選手が成長したり、良い選手が入ってくれるようになったりしてより強いチームになったと思います」
島村選手の言葉からは、過去に在籍した選手一人ひとりの努力が今のチームの礎となっていることがわかる。
「そこで僕が何をしたかというと、がむしゃらに食らいついて競争して、少ないチャンスをものにしてっていうことを繰り返してきただけ。チームに長くいる分、チームを引っ張るということをやりたかったですけど」
年齢に関係なくがむしゃらに競争に挑んでいく先輩の姿もまた、チームを助ける力の一つではないだろうか。
「ディフェンスという部分では、自信を持ったことはないというか、常に学ぶ側だと思ってるんで、ベテランの役割でもある後輩にアドバイスをしてあげることはできなかったんですけど、心がけていたのは、良いところを言ってあげるとか、褒めてあげるとか。僕は、先輩から褒められるとすごくうれしいし、自信を持って次に向かえるっていうことを感じていたので、アドバイスができない分、良いところを見て、言ってあげるっていうのは心がけていました」
これからは、こうした気遣いをピッチの外で発揮することになる。
「今は、すごい開放感です」
スタートしたときは、予想もしていかなった引退という選択でシーズンの幕は下りた。次章は、クラブスタッフとしての物語を紡いでいく。