ボイス
【ボイス:2018年9月21日】梅崎 司選手
新鮮な気持ちで
「試合に絡む回数が減ってきてたし、このままじゃダメだな、もうフェードアウトしていくなっていう思いが強かった。2016年にケガもして、ここ1~2年、明らかに練習が足りていないなっていう感覚もあった。もう一度叩き直して作り上げたいなっていうのが理由の1つですね」
そんな不安を感じていたさなかにベルマーレからのオファーが届いた。
「先輩方からも、『やらなきゃ落ちるよ』という話をずっと聞いていたので。今は限界は決めたくない、成長したい、そう思ってトレーニングを積んでいますし、できるつもりでやってます」
ベルマーレでは、どの選手にも指定席はない。練習に100%で取り組むことだけが試合出場を掴むアピールとなる。そのチームで練習を積み、試合出場の機会を掴み、フィジカル面の自信も取り戻しつつある。また、試合に出続けることで、これまで選手として活躍するために抑えてきた思いも解放した。それは移籍を決断するときに、曺監督が目の前に広げて見せてくれたものだ。
「『お前がそういう選手じゃないことを俺は知ってる。レッズに行ってケガもあったし、大きいクラブで生き残るために人に合わせたり、自分を変えていった。それもまた成長だとは思うけど、お前の本質はそこじゃないと俺は思うよ』と言われて。僕もやっぱりずーっと、もうずっとずっと思っていたんです、それは。レッズに来て、特に試合にかなり出るようになってから、自分自身、生き残るためにそうせざるを得なかった。でも、自分のなかでずっと引っかかっていたところだった。『ベルマーレでだったらお前はまたそうなれる、俺がそうさせる』と言われて。実際、そうなりたいっていう気持ちがずっとあったから、それを言われて。なんて言うんですかね、自分の本音を突かれた。そこが一致したので、迷うことはなかったですね」
生き残るために……それは具体的に言えば、やはりチームと個のバランスだ。
「守備に重きを置いたり、それこそクローザー的な役割も担うようになっていましたし。スタメンでも出てはいたんですけど、スタメンで出場してもどこかしら全体のバランスを見るような自分がいたりして。より他の選手の個性が活きるようにプレーしていたりとか。自然とそうなっていた。でも今も人を活かそうという気持ちはすごくあるんですよ。何かが違うんですよね」
チームやチームメイトへの思いは変わらなくても、自身が選択するプレーに違いがあった。それは自分自身にとって、どこか納得がいくものではなく、曺監督はそこを指摘した。
「監督によって戦術も違うし、戦い方も違うから、監督によってこんなに変わるんだなと改めて思いました。監督と合うかどうかっていう判断も大事なんだと身を持って感じますね」
日々の切磋琢磨も今の梅崎選手にとっては自らを成長させるために欠かせない張り合い。ルーキーのような新鮮な気持ちで取り組んでいる。
「曺さんは本当にみんなのことを見てるし、常に競争があるんで。日々にかける思いっていうのは、もちろん今までもあったし、ずっと思ってきたことだけど、それでも『今日もやってやるぞ』って、精神的なところから思うのは、何か久しい感覚というか、いい感覚だなっていうのは感じます。本当に、ルーキーみたいな感じですね」
曺監督からの言葉に成長を確信して移籍を決断したが、1つだけ後ろ髪を引かれる思いがあった。それは辛いときも少なくなかった選手生活を支えてくれたサポーターの存在だ。
「移籍を迷うことはなかったんですけど、サポーターにはね、僕、レッズのサポーターがすごく好きだったんで。どんな状況のときも本当に自分のことを応援してくれてる人が多くて。だからそこはやっぱり心苦しい気持ちがありました。でも、自分が生き生きしたプレーを見せることが恩返しにもなるかなと思って。というところで移籍を選びました」
今、梅崎選手は、一瞬の隙も逃さず最前線で攻撃を仕掛け、チームのために最後尾まで守備に走る、攻守に渡ってアグレッシブなプレーを観せる。目を輝かせてピッチに立つその姿こそ、古巣へ贈る感謝の言葉だ。