ボイス

【ボイス:2018年5月31日】大野 和成選手

自分自身に矢印が向く日々
さらなる成長を期する
 今シーズン、転機になった試合がある。3月11日開催、第3節ホームで戦った名古屋グランパス戦だ。

「足、攣っちゃって。走行距離なんかの数値もあまり良くなくて」

 名古屋戦までは、3バックの左というポジションを重視してか、サイドハーフに位置する杉岡大暉選手とのバランスを気遣ってか、良く言えば慎重な対応、忌憚なく言えば大野選手らしいアグレッシブさがまだ少し影を潜めているといった印象があった。それが第4節のFC東京戦から、本来のアグレッシブさを取り戻し、攻撃にも絡んでいくシーンが観られるようになった。

「曺さんに全然走れてないって指摘されました。別に走らないつもりでやっていたわけじゃないんだけど、大暉の後ろを追い越していくよりは、あいつをサポートした方が活きるかなと思っていたので。守備は自分が大暉を動かしていくイメージで。同じ左利きだけど、自分はドリブルとかが得意な選手ではないから、守備の部分でしっかり援護できれば大暉をより高い位置でプレーさせることができると思っていたんで」

 杉岡選手の長所をより活かすには、自分が守備を重視するのがより良いと判断していた結果だが、曺監督からはダメ出しをされることとなった。

「数値も悪い上に、名古屋戦では(ガブリエル)シャビエル選手のマークだったからというのは言い訳にはならないけど、キュンキュン動かれてきつかったのもあって。
 本当によく見ているから、曺さん。やっぱりデータも良くなかったんで、湘南でやるには、やっぱり走行距離とかのデータも伸ばしつつ、攻撃的な面も出していかないといけないと思いました」

 杉岡選手は縦の関係を構築するパートナーであり、同じポジションを争うライバルでもある。

「若い選手だけど、クロスもいいものを持っているし、いい関係を築いていきたい」

 チームとして今、徐々に熟成されつつあるが、それでも課題も多いと感じている。

「今、やっているサッカーを緩めちゃいけないと思ってます。結果がついてきて、緩むんじゃなくて。できていることをもっともっと鋭くっていうか、高めていかないといけない。そうやってチーム全体でハードワークすることがこのチームの良さだと思うんで。敵陣でもっとプレッシャーをかけるとか、ボールを取りに行くとか、基本的なことを緩めずやっていく。それプラス、やっぱり得点をとらないと勝てないですから、相手にとって危険なプレーをする。得点をとった後の時間帯をもっと大切にするとか。そういうことを突き詰めていくのが大事かなと思います」

 チームとしても個人としても発展途上だが、目指す目標はあくまで高い。曺監督も今シーズンの展望を問われて、「これまで見たことがない景色が見たい」と語っている。

「J1に残留するために来たわけじゃない。このチームで上に行きたいし、このサッカーで上位争いをしたい。やるならもちろんトップを目指したい。勝つために少しでも自分がチームの力になれればと思っているし、トップを目指すと考えるとまだまだだなと自分的には思うんで。日々練習がすごく激しいなかで、しっかり自分もそういう思いを持ちながらやって行きたい。まだまだこんなもんじゃないですよ、俺。もっとやれます。今、自分に矢印をしっかり向けてサッカーができてる。それはいいことだと思うし、続けていきたい。頑張ります」

 夢物語を語っているわけでも手が届かない話をしているのでもない。指揮官も、率いられる選手たちも、目指すところは頂きだ。



取材・文 小西尚美
協力 森朝美