ボイス
【ボイス:2018年2月12日】端戸 仁選手
成長を手にしたシーズン
「湘南での1年目は夏を乗り越えられなくて。広島戦(2016年8月13日開催2ndステージ第8節サンフレッチェ広島戦)で点を決めた後に大きなケガをしちゃったんで。運、持ってないなと思いましたし、チームも降格しちゃったんで、すごく悔しい思いでした」
手術をした時点での復帰予定は7ヶ月後。これほどの長いケガは初めての経験だった。
「これだけサッカーから離れると戻ったときは簡単じゃないのはわかってましたけど、予想以上に難しかったです。シーズンをリハビリで入るのも初めてだったし、体力だったり、ゲームの感覚だったり、最初はこれほど難しいものなのかと思いました。でも、練習をすごく一生懸命やるチームだから、しっかり練習をやって、それでゲームに出られなかったら仕方がないとも思ってました」
始動当初は別メニューだったものの、開幕を迎える前に予想以上に回復し、全体練習に合流した。難しさを感じながらも試合にも絡み、本来のプレーを取り戻すべく、練習に励んだ。
「本調子に戻れたのは、夏ちょい前ぐらい。6月頃だったと思います」
端戸選手の調子が上がってきたタイミングとチームがコンスタントに勝ち星が取れるようになった時期が重なる。
「それまで自分が先発で出ても全然勝ててなかったんですごく申し訳なかったし、不安な面もあった。確かアウェイの徳島戦(6月10日開催18節徳島ヴォルティス戦)で初めて自分が先発で出た試合で勝てたんです。そこからだんだん勝てるようになって、自分もコンスタントに出られるようになって、ちょっとずつ気持ちが楽になってきてっていう感じだった。振り返るといろんなことがあったシーズンだったけど、とにかく優勝できてよかったです」
先発した試合での勝敗は、やはり気になる。
「自分が出て勝てないというのは、一番悔しいことだから。そういうときこそ練習を一生懸命やることしかできないんで、そこは下を向かないでやってきたつもり。とにかく練習を一生懸命やってきたこその結果だと思っているんで、そこは自信を持って良かったと言えるところです」
端戸選手からは、話の端々に「練習」という言葉が出てくる。それほど昨シーズンは、練習が支えになった。
「練習から本当に気が抜けないですし、100%でやってないとすぐに見透かされますから(笑)。でも、曺さんに言われるからやるとかじゃなくて、本当に100%でやらないと試合に出られないことはわかっているんで、いつのときも気を抜かないでやってきたつもり。それが結局自分のためにもなるんで」
日々の練習は、強度が高く、全力で臨まなければ乗り切れない。それは、選手個々が置かれた状況を言い訳にせず、全員が同じ方向を向く空気を作り上げる。
「練習でいつも100%やる姿勢というのは、簡単なものじゃない。特に、試合前日のセットプレーの練習とか、先発では出なさそうなチームの方が、出そうな選手のために一生懸命やるというのは、本当に簡単なことじゃなくて。でもそれをみんなで一生懸命声を掛け合いながらやっているのを見ていて、すごく良いチームだなと思ったし、そこに自分も居られて幸せ。やっていて良かったなと思います」
曺監督は、試合の先発メンバーを当日まで発表しない。相手チームとのバランスもあり、ギリギリまで考え続けるためだ。とはいえ選手自身は、練習のなかで大枠で出場できそうな選手、バックアップに回りそうな選手、と察するものはあるという。端戸選手ももちろん、それで心を揺らすことはあったが、周りの選手の態度から学び、練習に対する自分自身の気持ちの持ち方を変えた。
「今週は試合に出られなさそうだなというときの練習の姿勢こそがすごく大事。そういう思いを見せないこともプロの仕事だと思うんで。どんなときも一生懸命やるって、簡単に見えて本当に難しいことなんで、その点に関しては、マリノスのときから自分が成長したなと思うところですね」
チームの勝利には、全員で戦うことが大切だ。ピッチに立つ選手もバックアップとしてスタンドから見守る選手も、気持ちを一つにしなければ、J2といえども優勝は難しい。それを端戸選手は、ケガで別メニューで過ごしたときに感じた。
「金沢戦(9月30日開催第30節)とか水戸戦(10月7日開催第31節)とか、自分はケガで出られなかったんですけど、みんながすごく良いゲームをしていて。そこに出られないのはすごくもどかしくて、すごく悔しかったけど、やっぱりみんなが勝ってくれたおかげで昇格できた。誰が抜けても、誰が入っても変わらないで試合ができるのは、それはみんなが練習から一生懸命やっているからこその結果」
個の評価も選手にとっては大切なもの。だからこそ、試合に出る出ないで心は揺れる。そこを越えてチームを大切に思えた2017シーズン、端戸選手のその成長ぶりはプレーに映し出されていた。