ボイス
【ボイス:2018年2月12日】端戸 仁選手
移籍で拓けた新境地
「最初に来たときは、練習のきつさにびっくりしました。もちろんマリノスでも一生懸命やっていたんですけど、今思うとどこかふわふわしてたような。試合に出られてなかったこともあって、ちょっとふてくされていたというか、気持ちがちょっと違う方向を向いていて、100%サッカーに集中できてなかったっていうのが、このチームに来てわかりました」
充実したシーズンを過ごした今だからわかる。あの頃には、サッカーに正面から向き合えていなかった自分がいた。今は、チームの雰囲気がごく自然とサッカーに向かわせてくれるという。
「みんなすごくサッカーに真面目。サッカーのことを考える時間も増えたし、目の前のゲームに向かっていく姿勢というのは、みんなから学んだこと。移籍して来たときは、このチームでダメだったらサッカー人生終わりというくらいの気持ちだったので、そういう意味では曺(貴裁監督)さんに出会えて、来て良かったなって思います」
Jr.ユースからF・マリノスで育っだだけにトップチームへの思い入れも深い。しかし、層の厚いF・マリノスでは、ケガもあって出場機会をなかなか掴めなかった。思いと現実が噛み合わないなか端戸選手は環境を変えることを考え始め、2015シーズン後は自らも移籍を望んだ。
オファーはもちろんベルマーレだけではなかったが、いくつかあった選択肢のなかからベルマーレを選んだ理由はやはり曺監督の存在だった。
「曺さんがJr.ユースの監督をやっていたとき、ユースのときもそうだし、何回も対戦していたんで。あんまり喋ったことはないけど、僕のことをよく知ってくれていて、縁があったのかなと思って。もう一つは、1回、今までやったことがないタイプのチーム、むちゃくちゃ走るという、これまでやったことがないサッカーに挑戦して新しい自分を見つけるというか、そういう可能性を広げるためにもと思って決めました」
2012年に経験したギラヴァンツ北九州への期限付き移籍の記憶もまた、移籍を前向きに捉える後押しをした。
「プロ4年目だったんですけど、40試合近く使ってもらって。あのとき初めて1年を通してプレーしました。あそこでの経験がなかったら今、自分がプロ選手をやっているかどうかもわからない。マリノスに帰ってからは思ったような成績は残せなかったですけど、あそこでの経験はすごく生きている。ケガや環境のせいにしちゃいけないですけど、移籍をして良い経験ができたこともあったので環境を変えてみたかった。今は、すごく良いチームに巡り会えたと思うし、ハードワークするチームに来て、少しは新たな自分を見つけられたかなと思います」
曺監督が指揮を執るサッカーは、まず走ることが前提にあるもの。基本的なことではあるが、端戸選手自身、これまでに経験のないスタイルだ。実践するためには、今まで常識と思っていたサッカー観を覆さなければならないこともあった。
「そこはトライだし、自分の幅を広げるためにもすごくいいことだと思った。これだけ走るチームに来て、走れなかったらやっぱり試合には出られないだろうし。そういう意味でも新たな可能性は広げられたじゃないかなと思います」
昨シーズンの出場は27試合。ケガやリハビリなどで出場自体が難しいとき以外は、最低限ベンチメンバーに名を連ねるなど、試合にしっかりと絡んで、こうした言葉を裏付ける実績も重ねられた。
とはいえ移籍前、走ることに自信があったわけではない。そこは挑戦者の気持ちだけを持って飛び込んだという。練習を重ねるなかで感じたのは、チームのためにという思いや、無駄な走りを減らすように考えることの大切さ。チームのためを思って走れば一歩を頑張ることができ、考えることで無駄に走ることなく質を上げられる。
「少しずつできるようになってきているのかなと思います。ただ自分の場合、先発で出ると70分過ぎからガクッと落ちちゃう傾向があるんで、そこはまだ課題だと思う。それでも移籍してきたばかりの頃に比べると、このチームのリズムだったり、周りの選手の特徴だったり、自分がどういう仕事を求められているかもわかってきたつもり。だから、先発で出ても90分走れるようになればもっともっと決定的な仕事も増やせると思う。前半から飛ばしている分、簡単なことじゃないですけど、体力的にきついなかでも止める・蹴るの技術をもっと磨いたり、得点だったりアシストだったりできるようになれば、もっと上のステージでやれると思う。90分走ることは、これからも続く自分の課題だと思ってます」
2018シーズンは、よりレベルの高いプレーが求められるJ1がステージ。サッカー選手としての人生は、これからが本番だ。