ボイス
【ボイス:2018年2月16日】秋元 陽太選手
すべての経験がこれからの糧に
「首位にいるとか、昇格圏内にいるとか、そういう安心は全然なかったです。連敗したらすぐ落ちちゃうだろうという恐怖しかなかった。前期はチームとして試行錯誤していた部分があったし、ケガ人も出てしまったり、順位も安定しなかった。後期もやっぱり『なんで俺ら勝てたんだろう?』みたいな試合があって。相手の方が攻めていて、うちはまったくチャンスも作れないなかでセットプレー1本で点を取って勝ったりとか。試合終了のホイッスルが鳴るまで緊迫したゲームで、いつ失点してしてもおかしくない場面もたくさんありましたし、一瞬の気の緩みが失点に繋がると思ってみんなで気を張っていたので、昇格が決まるまで本当に厳しかったです」
特に印象に残るのは、勝利を収めた試合は最小得点差が多く、負けた試合は複数失点を喫することが多かったこと。
「自分たちがやりたいサッカーがまったくできずに複数失点で負けて、勝ってるときはなぜか1対0とか、圧倒できた試合もなくて。でも、複数失点が多かったのは、やっぱり反省しなきゃいけない。失点後に慌てないでゲームに臨むことができなかったという課題が出たということです。もちろん相手のシュートが良かったっていうのもあると思うんですけど、そういうことが重なるのは、やっぱり自分たちの甘さ。特に複数得点を取ったときに複数失点してしまうこともあって、それはやっぱり自分たちに原因があるということだと思います」
また、終了間際に失点して勝点を落とした試合も数試合あった。
「前期の山形戦(5月27日開催第16節)だったり、後期の横浜FC戦(9月2日開催第31節)だったり。前期に関しては完全に自分たちの気の緩みだったと思います。ただ横浜FC戦は、『これがJ1だよ』というのを味わえた経験だと思った。どちらの経験も今思えば結果的に成長につながる良い経験だった。『そこからみんなで』っていう流れができた。そこらへんがまた、今年の湘南らしさかなと思います。本当に不思議なチームでしたね」
すべての試合から学ぶべきことがあったと感じている。特にシーズン前半の敗戦や引き分けた試合は、チームとしてステップアップするための課題が突きつけられた試合だった。
「自分たちの守り方などで課題はありますが、今年そういう経験ができたのは、僕はプラスに考えています。J1でそれをやっていたら、また降格してしまうので。それにそういう経験ができたから、『あの時はこうだったから、今この時間帯は』っていう対応ができるようになっていったので。それが夏場に繋がったと思うから」
夏の盛りから秋にかけて負け知らずで突き進んだが、そのきっかけとなった試合がある。それは、7月22日アウェイで開催された第24節のモンテディオ山形戦。この試合は、3失点と複数失点しただけでなく、なすすべなく負けたという印象が秋元選手自身にも強く残っている。
「俺らが悪かったんで。球際の一歩を寄せる部分とか、それを気づかせてもらえた、原点に戻れた試合です」
翌日にリカバリを行い、1日のオフを挟んだ火曜日はひらつかビーチパークでの練習となった。この練習が選手全員の意識を変えた。
「0対3で負けて、本当にひどい試合をしてしまって。これはもう来週絶対に何かあるなと。夏場の砂浜は本当にちょっとやばかったです(笑)。僕も曺さんの元で3年間やらしてもらっているんで、ある程度は予測してましたけど。
砂浜での練習は、ピリッとした雰囲気でした。終わったあとに曺さんが『これをやった意味はこうだ』と説明してくれて。きつかったですけど選手もわかってましたし、納得して。その週は、その後もミーティングをたくさんやりました。だからこそ、翌週のホームの試合、徳島戦(7月29日開催第25節)は2対0で勝てたのかなと思います。みんなの気合いが違いましたね。絶対に負けたくない、勝ってやるって、顔が違った。僕もあの日だけは今日は絶対に勝つなって試合前に思いました」
その後は10月15日に開催された第37節名古屋グランパス戦まで負けなしで戦い抜いた。
「相手があることなので、勝ち続けることはできませんでしたけど、山形戦の敗戦とその後の練習やミーティング、そこがキーポイントだったと思います。練習だったり、試合に臨む考え方だったりというのが一気にチームに浸透した。チームとして成長できたと思います」
きつかった印象ばかりが残る夏を振り返ったときに思い出されるのは、家族からの言葉。
「嫁に、『本当によく寝てたね』と言われました。夏は、練習から帰ってきたら昼寝して、夜も、ご飯を食べたらすぐ寝ていたので。これまで夏は、眠れないとか食事があまり食べられないとかたまにあったんですけど、去年は食事もすごく摂れて、睡眠もめちゃ取れました。それぐらい疲れてました」
睡眠時間が増えた理由として自覚しているのは、身体の疲れもさることながら「脳の疲れ」だという。
「試合が終わった瞬間がめちゃ疲れましたね。『やっと終わった』という開放感、みたいな。特にゴールキーパーは、最後の最後まで何があるかはわからないので気が抜けなかったですし」
若い最終ラインをコントロールし、日々成長するチームを最後尾から押し上げた。全ての力をピッチに注ぎ、全力で駆け抜けた1年は、サッカー選手としては理想的な時間の過ごし方だったことは間違いない。