馬入日記
【馬入日記:9月8日】越えていく
フィールドプレーヤーとは異なる赤い練習着を身にまとい、GKの選手たちも日々ハードにトレーニングを重ねています。そんなピッチには今季、ユースに所属しながら2種登録でトップチームに帯同する真田幸太選手の姿があります。「ついていくのが精一杯」思わず本音がこぼれますが、その言葉とは裏腹に語る表情は晴れやか。練習で手にする充実は、他の選手と相違ありません。
トップ、ユース両チームの練習に参加することで感じるのは、あらゆる面での”はやさ”が大事だということ。
「反応の早さ、判断の早さ、移動の速さ。全てのプレーにスピードが求められるのがプロの世界だなと、トップの練習に参加していて感じています。特に判断は早くしていかないと次のプレーに追いついていけませんし、そこでも遅れてしまうと次もどんどんズレてしまって、良いプレーに繋がらないんです。スピードについていくことが大事だと思っています」
より的確な判断を、より早く。安定したプレーを表現するには、身体はもとより頭も90分間フル回転させる必要があります。「自分の頭で考えてプレーすること」と、齋藤誠一GKコーチからも日々言葉をもらいます。
「トップの練習に参加するようになって、頭も疲れる、という感覚があって、それがちょっと新鮮なんです。トップの選手はみんな自分のやるべきプレーをわかっているので、ユースの時よりもGKとして出す指示は絞られてきます。でもだからこそよく考えて指示をしなといけないと思っています。練習から頭はいっぱいいっぱいです」
目を回すように過ごすトップでの時間も、しかしユースの練習では貴重な経験としてチームに還元されます。トップで目にしたプロの世界を、ユースで体現することが真田選手の果たすべき役割でもあります。
「トップで学んできたことをそのままプレーで示すということは意識しています。後輩たちもそれは見てくれると思うし、それを示すことで『こういうふうに練習で成長していくんだ』ということを感じてくれると思います。あとはやっぱりトップに比べればユースの練習は取り組みの強度にまだ甘さがあるなと感じますし、そういうところは自分から発信して声をかけるようにしています」
トップで得た実体験を、ユースの仲間と共有する。より自身と周囲を高みへと臨む裏側には、先日ユースの一員として出場した日本クラブユース選手権での苦い経験があります。
「チームとしては結果を残せましたが(ベスト8)、個人的にはいっぱい課題が残りました。自分のキックミスから守備に回らざるを得ないような状況を作ってしまったり、あとはやっぱりシュートストップのところでも、自分がもっと止めていれば失点を減らせて勝てたんじゃないかとか。やっぱりトップで(秋元)陽太さんとかを見ていてもキックのミスはないですし、その1本を止めたから勝てたとか、引き分けに持ち込めたとか、そういう試合がたくさんあると思います。迫力やオーラも、自分はまだ足りないです」
タンドウ(ベラピ)さんからも後藤(雅明)さんからもたくさん学んでいると、頼もしい先輩たちから吸収すべきものは多いいま。それでも「憧れだった選手を越えていきたい」いつまでも後ろをついていくだけのメンタリティではありません。
「チームを救う1本や、ゲームの流れを作るゴールキーパーになっていきたい」
4人のGKが繰り広げる競争の中に、今日も真田選手の汗が光ります。