馬入日記

【馬入日記:7月5日】純粋な想い

IMG_3746負傷から約3ヶ月。肌寒かった3月末から時間は流れ、暑さを感じる季節になりました。これまで室内でのトレーニングが多かった高山薫選手も、グラウンドに出て陽を浴びる時間が長くなる今日この頃。白線の中でしのぎを削る仲間の傍らで、トレーナーと共に黙々とメニューをこなしていきます。

「どこまでどうできていれば順調なのか、わからないよね」そう笑いながらも、焦らず確かに一歩ずつ前へは進んでいるよう。

「今はジョギングが始まったばかりだし、そういう意味ではすぐに”ガッ”とは動けないから、あまり焦りもない。全部が全部ではないかもしれないけど、トレーナーが作ってくれている計画表を見ながら、順調には行っていると感じています。でもみんながプレーしている姿を見ると、めちゃくちゃサッカーはしたくなる」

湧き出る自然なサッカーへの想い。そう感じる心の内は、しかし本人の言うよう焦りではなく、重なるのは幼少期の純粋な心。頭の中には過ごした等々力陸上競技場での思い出が浮かびます。

「フロンターレのアカデミーにいた時、等々力で試合を見てると無性にサッカーがしたくなって、競技場の端っこにあるちょっとしたスペースでみんなでボールを蹴って、そこからみんなふざけ出してよく怒られてたんだけど。そういう小さい頃の『めっちゃサッカーしたいな』と思った記憶を思い出した。そういうことをやっていた分、これだけ毎週、試合を観てだけいるっていうのも初めてだし、やっぱりサッカーしたいなと思うし、ボールも思いっきり蹴りたいなと思う。こういうピュアな気持ちって、大事だと思うんだよね」

「思い続けるのは難しいものだけど」つぶやきながら、改めてプレーをするにあたって忘れてはいけないものを考えます。

「いまプロ7年目だけど、1年目の頃は声援のすごさとかを感じて、もうただプレーするような感じだった。そういう意味ですごくピュアだったんだけど、歳を重ねたり自分の置かれる状況が変わったりしてくると、『試合に出なくちゃ』とか『勝利に貢献しなきゃ』とか、もちろん持たなきゃいけない想いだけど、考えても仕方のないことを考えてしまう。でもいまサッカーができなくなって、純粋にサッカーだけしたいという気持ちに帰ってきている。そういう状況ってなかなかない。だからその気持ちをピッチに落とし込めれば、自然にチームのために頑張れると思うし、それがチームの勝利にも繋がっていくと思う。そういう気持ちでやることが大事なんだなと思えたことは、怪我してわかったことのひとつかな」

わかったことの、ひとつ。

「あとは、意外といろんな人が自分のことを思ってくれてたんだなと。心配してくれる人もたくさんいたし、そういう人が多くいることに自分自身が気づけていなかった。だからやっぱ感謝しなきゃいけないな、と。こういうのも感じる瞬間っていうのはあるんだけど、思い続けるのって難しい。だから、やっぱりピュアな気持ちを忘れず続けていきたいですね」

自身がピッチの外で過ごしてきた期間。チームは毎回厳しい戦いを強いられながらも勝点を積み上げてきました。「毎回生まれてくる課題をちゃんとクリアして、次の試合の成果につなげて、成長しているなと感じています」着実に前進するチームを眺めながら、改めて自身のすべきを見つめます。

「この3ヶ月はあっという間といえばあっという間だった。前向きにやっていかないと、無駄に時間は過ぎてしまうから。色々やらなきゃいけない時は時間は一瞬で流れてしまう。ピュアに、これからもしっかりやっていきたい」

再び心に抱いた純粋な想いと共に、今日も高山選手は一歩ずつ前に進みます。