ボイス
【ボイス:2017年5月24日】島村毅選手
今シーズンも新たな可能性を拓く
今シーズン、再びフォワードとしてチャンスが巡ってきている。3月12日にアウェイで行われた第3節ツエーゲン金沢戦ではフォワード登録で控え組に名を連ねた。
「やっぱりうれしさはありますよ。1年目でディフェンダーにポジションを変えたときは、フォワードとしてプロでやっていくのはちょっと難しいと、ある意味、諦めたことだったんで。10年経ってもう一度フォワードとしてプレーできるというのは、やっぱりうれしい。それにあのときと違って、もうフォワードには戻れない・戻らないというのと今は違うから。ディフェンダーでありながらフォワードでもプレーできたらいいという、選手としての幅の部分が広がるという意味で考えてもらっていると思うから」
実際の試合では、藤田征也選手のアクシデントもあって、思った以上に早く出番が訪れた。前半31分で藤田選手と交代で入り、その時は3バックの右へ。後半はスタートから3バックの左でプレーし、その後、シャドーの位置に入り、75分過ぎたあたりからは4バックの左サイドバックへとポジションを移した。
「あの試合は、フォワードで行くかもしれないと言われていました。途中から前線をやらせてもらったのに、そこでうまく攻められなかった部分があって、また後ろになったと思うので悔しさがあります。点を取りたかったですね」
この試合は、島村選手のフォワード起用にも驚いたが、攻撃のリズムを構築するために行われたポジション変更のめまぐるしさとピッチにいた選手全員がその変更を躊躇することなく遂行する対応力も目を引いた。
「それは、うちでプレーしていたらみんな、練習でも練習試合でも公式戦でもよくあることなんで。いろんなパターンを練習でやってるし、後ろをやっていても右から左に変わるのはいつものこと。みんなそれがスタンダードになっているっていうのは、いいことだと思います。こんなに試合中に変わるチームもないと思いますけど、練習からやってるんで、問題はないです」
そうはいっても最前線と最終ラインは大切なものが真逆のポジション。この試合では、前線から最終ラインにポジションを移した時に、さすがに切り替えに一瞬の戸惑いがあったという。
「最終ラインから前に行くときって、最後の最後、失点からは遠い場所なので守りのことからは解放されて『点を取るんだ!』っていう気持ちになるんですけど、ディフェンスに戻るときは、またもう1回『最後は絶対にやらせないぞ』というスイッチを入れ。そういう点では、前から後ろに戻るのは、気持ち的にちょっと大変ですね」
試合終盤、背の高いディフェンダーが前線に行って仕掛けるパワープレーとは勝手が違う今シーズンの役割。ポジション変更は慣れたものとはいえ、ここまで振り幅が大きい選手はそうそういないだろう。
しかも曺監督はチーム事情も鑑み、シーズンを通して島村選手をフォワードで起用することも視野に入れ、「彼は自分がチームに求められることに応えていけるやつなので」と期待を寄せている。
「後ろにいてもそうなんですけど、フォワードの選手に負けないくらい点を取りたい気持ちはずっと持ち続けているんで。曺さんに事あるごとにディフェンダーとしての喜び、駆け引きに勝つことだったり、1対1に勝つことだったりっていうことに喜びを覚えろって言われるんです。そしたらもっと上に行けるぞ、と。ただそれと同じくらい、僕は点を取ることにも喜びを感じていて(笑)。
ディフェンスでね、みんなで90分間身体を張って無失点で抑えて勝ったときも最高の気持ちですけど、そんななかで点も取れたらもっと最高なんですよね。その二つ、無失点と得点にこだわる気持ちは辞めるまで持ち続けたいですね」
毎年選手一人ひとりにつけられるキャッチフレーズがあるが、島村選手は2013シーズン以降、変わりなく「湘南乃虎」を選んでいる。早稲田の虎から湘南乃虎へ。今シーズンは、これまで以上にこのキャッチフレーズが意味を持つシーズンになりそうだ。
取材・文 小西尚美
協力 森朝美