ボイス

【ボイス:2017年5月24日】島村毅選手

まだまだ向上心を持って!
J1の上位で戦える選手を目指して

 ベルマーレへの復帰に際して期したのは、ポジション奪取。徳島では右サイドバックで定着していたこともあって、同様のポジションを狙うつもりだった。ところが新しく指揮を執ることになった曺貴裁監督が目指したサッカーは、これまでとは少し趣が違った。
 
「蓋を開けてみたら3バックで。3バックはほとんどやったことがなかったんですけど、でもやってみたらサイドバックとセンターバックの間みたいな役割りで、自分に向いているなと思った。
 スタイルとしてはソリさん(反町康治監督:松本山雅FC)と似た部分はありますけど、より攻撃的でアグレッシブという感じ。まず前を見ろっていうのは、ずっと変わりなく言われています。海外のサッカーのビデオを本当にたくさん見せてもらいながら勉強して、曺さんが目指しているサッカーをいいなと思えるし、やっていて自分たちも楽しい。亮太(永木選手:鹿島アントラーズ)や航(遠藤選手:浦和レッズ)、丸山(祐市選手:FC東京)のように日本代表に入る選手も出てきて、うちから移籍してJ1で活躍している選手もたくさんいる。世界のトレンドである、ああいうアグレッシブなサッカーに自分もトライさせてもらっているっていうのは、楽しいし、やりがいしかない」
 
 曺監督が目指したサッカーは、攻撃においては最終ラインの選手もアタッカーの一員となってフィニッシュに絡み、守備では最前線の選手たちからプレスが始まり、次々と近い選手たちが連動していく。どのポジションの選手にとってもこれまでの常識を覆さなければ実践するのが難しいものだ。今でこそやりがいを語る島村選手にとってもこの新しいスタイルは、最初から今に至るまで、それまで以上に学ぶことの多いものだ。
 
「曺さんが監督になった最初の頃は正直、縦パスだったり、前線へのパスコースが単純に見つけ出せない部分もあった。これは曺さんのサッカーが、というより、僕の個人的な技量の話で。ちょっとずつちょっとずつ経験することでボールを持ったときにできることが増えていったのかなと思います」
 
 少しずつ少しずつ積み重ねてここまで来た。長く島村選手を見ている誰の目にも明らかなのは、その成長ぶりが手に取るようにわかること。すべては島村選手自身の努力の賜物だ。
 
「トラップ一つ、ちゃんといい位置に置かないとパスコースが減る、視野の確保もできなくなる。以前はいっぱいいっぱいになっていた部分もあったし、他にも要因はたくさんあったけど、それを一つひとつクリアして。守備の部分だったらツボさん(坪井慶介)だったり、バイア(アンドレ バイア)だったり。ビルドアップだったら航とか丸山とか三竿(雄斗選手:鹿島アントラーズ)とか、本当にうまい選手と近くでプレーできたんで、味方から学ぶことがたくさんあったなと。そこでちょっとずつ成長させてもらったなっていうのはあります。それでもまだまだパスセンスとか技術の部分は下手くそですけど、この年齢になってもできることがちょっとずつ増えていることが感じられているんで、まだまだ向上心を持ってやっていきたいですね」
 
 曺監督が指揮を執るこの6シーズンのすべてを共に歩んできた唯一の選手。その歩みは、常に自分自身と向き合い、成長するために練習を積み重ねるものだった。年上の選手はもちろん、自分より年下の選手からも素直に学ぶ姿勢を持ち続けられることこそが島村選手らしさだろう。
 
「僕は、センターバックをやったときも、サイドバックも、徳島で右サイドをやったのも初めてで、帰って来たら3バックで。正直、全部わからないなかで始めて、スタッフや仲間に教わって、見て盗んで。いつも新しいことにチャレンジできたので楽しかったですね。常に刺激があって、競争のなかにいて。なんていうのか、1年間を通して絶対的な存在として試合に出られた年なんてないんで、自分のポジションを絶対的なものにしたいっていうのはもちろんありますけど、そうは言ってもまだまだ下手くそなんで。競争するしかないなという気持ちで毎年スタートしてますね」
 
 ベルマーレへの復帰に際して心に刻んだディフェンダーとしてポジションを常に確保する目標には、まだ手は届いていない。しかし、折々に出場機会を掴み、特に大切な試合で結果を残すサッカー人生を歩んでいる。何より監督や仲間たちから信頼を寄せられるのは、そのプレーを支える気持ちの熱さと強さだろう。
 
「それだけの存在感を見せられたらたくさん使ってもらえる思うので、1年を通して試合に出られないというのは、やっぱり自分に足りないものがあるからだと思う。
 僕も高校の頃はレギュラーでプレーできていましたけど、早稲田は本当にいい選手が多くて、当時はレギュラーが取れたらプロに行けるようなレベルだった。そのなかで4年間ずっとポジション争いを続けてました。スタメンのときもありましたけど、だいたいはフォワードとして後半の途中から出場することが多かった。悔しい思いもありましたけど、出たときにどう活躍するか、どう存在価値を証明するか、そうやって次の試合で使ってもらうというのをずっと続けてきた。それはプロになっても変わらない。どんなときでも出たときに何ができるか、そのチャンスが来るまでしっかり準備する。これは大学時代に培ったことで、32歳になった今でも変わらない部分ですね」
 
 成長に年齢は関係ないというが、「まだ下手だから」と潔くモチベーションを高く維持するのは、容易ではない。特に年齢を重ねればなおさらだ。
 
「プロになる選手は、学生時代絶対的なレギュラーで、プロでも試合に出てという場合が多いから、使われなくなるとガクンときちゃう選手もいるかもしれないけど、僕はそういうタイプじゃないんで。出るためには結果を出していかなきゃいけないし、結果を出せばまた使ってもらえる。その繰り返し。フォワードは直接的に点を取るのが仕事だったし、今、ディフェンダーになってもそういう気持ちでやっている。昔と違うのは、『無失点』が付け加わったくらい。そういう意味では、19歳からずーっと同じことをやってますね」
 
 状況を受け入れ、謙虚に自分の力を振り返り、努力しながら目指す方向へ向かう。シンプルな在り方だけれど、それを実行し続けるのはなかなか難しい。でも、これができることこそ、島村選手の魅力。不屈のハートがあるからこそ、いざというときに頼りになる存在なのだろう。今シーズンもその熱い気持ちで戦っている。
 
「僕自身、1個1個積み上げてきましたけど、J1のレベルから見たらやっぱり本当に下手くそ。このチームとしてはJ1からJ2に3回、その前を入れたら4回ですけど、落ちてしまっている。でもチームとしてJ1に定着することだったり、J1で上位に進出することだったりっていうのがやっぱり目標なので、そういうことにずっとトライしている。まだまだな部分があるからこうやってJ2に戻ってきてしまったけど、しっかり今年1年で昇格して、次こそJ1で上に行きたい」
 
 J1の上位で戦える選手を目指して。今シーズンもまた切磋琢磨する姿勢に変わりはない。

>再びフォワードにも挑戦!今シーズンも新たな可能性を拓く