馬入日記
【マラガ日記:番外編】「オールウェイズ湘南スタイル」
マラガキャンプを終え、馬入でのトレーニングに戻ったトップチーム。今回のキャンプに帯同いただいたライターの隈元大吾氏による「マラガ日記」の番外編として、最後に隈元氏の感想を交えキャンプを振り返ります。
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まだ夜が明けぬうちにマネジャーらスタッフはクラブハウスを出発した。トレーニング用具やメディカル関連の機材などトラックいっぱいに載せた荷物を空港に運ぶ。滞りなく旅立つには、チームよりも先に着いて荷を下ろし、飛行機に積み込む準備を済ませておかなければならない。出発前の選手たちの様子を記録すべく、フロントスタッフも空港へと急ぐ。移動しながら彼らが簡単な朝食を頬張っていると、ようやく空が白んできた。
空港に着くや荷物は数人のスタッフの手で瞬く間に運び込まれた。出発ロビーの一画を占拠するほど膨大な量も、「いつもの3分の2ぐらい」とマネジャーは涼しい顔だ。やがて選手が到着すると、誘導して記念撮影を行なう。荷物を預ける際に多少手間取ることはあったものの、とくに大きな問題もなく飛行機に乗り込んだ。
今回のスペインキャンプは初めて帯同というかたちで取材を行なった。チームと行動をともにさせていただくことで、トレーニングやゲームはもとより、普段は目の届かない日常の側面も垣間見ることができた。とりわけ惹かれたのはスタッフの方々の振る舞いだ。出発前のくだんの準備然り、現地に入れば食事もそこそこに打ち合わせ、コーチ陣はひと足早くグラウンドでトレーニングに備える。練習試合の映像はすぐにポイントを絞って編集され、次のミーティングに活かされる。メディカルにも休みはない。ホテルに戻り、ふたたび選手の体を入念に整える。たとえばそんなふうに、皆それぞれの職務に集中しつつ、互いに協力し合いながらチームづくりをよりよく前に進めていく。仕事だから当たり前、けれどその当たり前を着実に遂行し、加えて急な変更や予定外の出来事にも機敏に真摯に対応すればこそ、密度の濃い練習環境は確保される。キャンプの重要性を理解しゴーサインを出した会社、またマッチメイクを含めてコーディネートに奔走した外部スタッフの方々を含め、それぞれの尽力がチームの日々を支えているのだとあらためて気付かされる。
新体制発表会見で語られた水谷尚人代表取締役社長の言葉を思う。
「我々のフットボールは攻撃的で走る意欲に満ち溢れたアグレッシブで痛快なサッカーでありたいし、フロントも営業も事業も皆『オールウェイズ湘南スタイル』でいたい」
太陽に恵まれたマラガを発ち、雨交じりの平塚に戻ると、遠征の荷物はまたたく間に片付けられ、次のトレーニングで使うのだろう、早くもコーチ陣が異なる用具をトラックに積み込んでいた。チームに根付くスタイルのもと、共に走る日常が選手たちの成長を豊かに育むに違いない。