ボイス

【ボイス:2016年6月30日】石川俊輝選手

先輩たちからのサポートに感謝を
これからは後輩たちを引っ張っていく

 試合を重ねるごとに成長を見せる石川選手。曺監督も「本当に成長してくれているし、チームの中で欠かせないピースになりつつある」と評価している。
 自分自身、今季を振り返れば

「出られてはいますけど、チームの状況としては勝ててなかったし、自分が試合に出始めて勝てなかったのは辛かった。今も順位的には厳しいですし。出られているからといって満足はできないですし、出てどれだけ勝つか、チームが勝つのが第一だと思う。そういう意味では出ていても満足できるわけではない。やっぱり自分が出ている試合でもっともっと勝点3を取りたいという意欲はあります」

 リーグ戦で初勝利を挙げるまでに丸2ヶ月がかかった。それは、4月30日にアウェイで開催された第9節横浜F・マリノス戦。この試合は、横浜FMに縁のある選手がスターティングイレブンに名を連ね、期待に答える粘り強いプレーを見せ、後半開始早々に奪った高山薫選手のゴールが決勝点となったもの。このカードでの勝利はクラブとしても19年ぶりと記録にも残るもので、試合後に見せた奈良輪雄太選手と石川選手の涙が印象に残る。

「あれは勝てていなかったことに対しての責任……、その週に曺さんに呼ばれて、『いろいろ責任を感じすぎているんじゃないか』『怖がらずにやればいい』といった言葉を言っていただいていたので。勝ててホッとしたときに、ナラくんの涙を見て。リーグ戦でやっと勝てたな、本当に辛かったなという感じで」

 内容の良い試合を重ねていたとしても、勝てなければ自分自身と向き合わねばならず、それは時に過剰に自分自身を責めてしまう場合もある。特にピッチ上での経験が浅い石川選手が不安になるのは当然。しかも菊地選手も怪我で試合に出られない状況の今、自身がチームで背負うものは大きい。

「俊介も今年は副キャプテンにもなっていて、やってやろうという気持ちを見せていたなかでの怪我だったんでショックです。でも、起こってしまったことはしょうがないので、試合のときもいつも『俊介のためにも』という気持ちでやっている。変なプレーしたら俊に申し訳ないですし。自分で精一杯なところはやっぱりあるけど、でもいつも気持ちのなかでは『俊のために』と思います」

 2年間、頼ってきた二人がいなくなったピッチに、そのポジションを担って立っている。だからこそ、結果を出さなければならない。

「目に見える結果を残したい。まだまだやらなきゃいけないことがあるので、日頃の練習でどれだけ成長できるかというか、成長しないとダメ」

 ようやく勝利を得たが、今度はそのそばから同じポジションを争う若手たちが揺さぶりをかける。息をつく暇もなく新しい刺激がやってくる。

「今出られているからといってずっと出られるわけでもない。優太(神谷)だったり、未月(齊藤)だったり、北斗だったりいますし、うかうかしてられない。チーム内にいるそういった選手にも負けてられない」

 しかし、ライバルであると意識すると同時に後輩たちへの気遣いも見せる。それは先輩たちが態度で示してきてくれたものだ。

「自分は目立たないタイプだし、これまでも俊や亮太くんが輝いていたと思うし、今は例えば優太が、やっぱり目立つと思う。精神的にもしっかりしているし。そういった選手に、自分が亮太くんにしてもらっていたようなことができれば。試合になったら自分で精一杯な部分がありますけど、コーチングの部分や身体を張ることはできるんじゃないかなと思うので。
 亮太くんにはいつも怒られてばっかりでした、『もっと出ていっていいんだぞ』とか。実際亮太くんは、そういうことを身体で表現していたし、多少のミスも最悪、亮太くんがある程度身体を張って止めてくれていた。そういうことを伝えていきたい。優太にしろ、未月にしろいい選手なのは間違いないし、そういう選手が縮こまっていたらチームとしてもマイナスです。のびのびできるようにコーチングなどで支えられるんじゃないかと思うので。亮太くんだったり、ツボさんだったりにそういう言葉をかけてもらうことが多かったので、自分もそういう言葉をかけてあげることはできるんじゃないかと思う」

 誰かを頼ってピッチの中で迷子になっていた時期は卒業し、これからは後輩たちを導く力になりたいと願うほどまでに成長した。とはいえこれは、プロ選手としてやっと独り立ちをして、スタートラインに立っただけなのかもしれない。
 先に紹介した曺監督の言葉には続きがある。「もっと上手くなれることを認識しろと言いたい。もったいない」。今の石川選手ならこの言葉を、これからのさらなる成長の糧にできるのではないだろうか。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行