ボイス
【ボイス:2016年6月30日】石川俊輝選手
結果は後から付いてくるもの
なかなか結果が出なかった時期について振り返るなかで、ふと3月5日にアウェイで開催された第2節の川崎フロンターレ戦に話が及んだ。
「フロンターレに引き分けた時もチームは悪くなかった。自分は最悪でしたけど。広島に対してもあれだけ前から行けてましたし。そういった部分を考えると、やっていること自体は変えちゃいけないと思ってました。でも、勝ててないからどこか安全にっていう考えになったり、後ろにちょっと引いちゃったり、そういったことはありました」
この試合は、石川選手にとって気持ちの強さを試されるような出来事が続いた内容となった。
「フロンターレ戦は間違いなく前半で消極的なプレーになってたんで。あの試合は、終わった後に曺さんに『ハーフタイム、お前、顔が死んでたぞ』って言われて。実際に2失点に絡んでたんで、動揺もしてました。『こんなんで俺、ピッチに立つ資格あるのか?』と思ってましたし」
前半で3得点3失点、最終的に4対4で引き分けた試合は、前半から取って取られてのオープンな展開となった。
「前半の2失点、実際に自分がボールを取られてカウンター食らっての失点で、ハーフタイムはもう、どん底。切り替えなきゃいけないんだろうけど、切り替えきれてなかった部分もあった。あれだけ最悪な試合を乗り切れたのは、曺さんに使っていただけたというのもありますけど、1試合であれだけメンタルにくる試合はなかったのんで、精神的に強くなったなと。ミスがすぐに失点に繋がる世界で、もろに失点に絡んで、前半は、ボールを受けるのが怖くなったりしました」
その選手の経験値もあるだろうが、選手にとってミスがメンタルに及ぼす影響は少なくない。とはいえ、サッカーの得点がゴールキーパーから始まるビルドアップから生まれることはほとんどなく、むしろ中盤あたりでのボールの奪い合いを制しながら攻撃を重ねてゴールを目指すことが大半だ。突き詰めれば、いつもボールを奪った誰かが攻撃の起点であり、奪われた相手選手は失点の起点となる。得点を取り合うゲームであるサッカーで失点の起点となるのは、選手にとって何より辛い。
「『ボールを取られたら必ず失点してしまう』っていう感覚。そういう精神状態で良いプレーができるわけもなく。そうなると精神的に未熟な部分もあってボールを受けに行くのを躊躇するというか。受けて取られたらどうしようとか考えてしまって。それでも後半になってちょっとは良くなったんですけど、試合を通してみたら最悪と言っていいほどのプレーでした。チームがなんとか同点で終わってくれたのは、まだ良かったかなと。あまり思い出したくない試合ですね」
この後も勝てない試合が続いた。
「この後は引き分けすらなく何連敗もして。勝てないときは実際に自分自身も『俺が出て今何かできてるんだろうか?』『チームにとって俺が出ることが本当にプラスなのか』とか考えました。それでも曺さんが『結果の責任は俺が負うから』って言ってくださって。
その言葉で、俺は勝敗を背負う前にまず自分のプレーをしっかりやる責任を持たないといけないと思うようになりました。まず自分ができることをすべて出し切って、そのうえでチームにどれだけ貢献できるかっていうふうに。ただ『チームが勝つために』って考えるのは、違うのかなと思うようになりました」
試合に出る責任を果たすために自分の100%を出す。そのうえでチームが勝つ為にどう貢献するのかを考える。
「そうじゃないと勝てる世界ではないと思ってます、特にJ1は。だから毎試合自分の100%のプレーを出して責任を果たしていく。全員がそういった責任を果たせれば必然的に勝ち点3の確率は上がると思いますし。だから結果の責任というよりかはまず、自分のプレーの責任を果たすようにしようと、ここ何試合はか考えるようになりました」
少し考えを変えて試合に臨んで、結果が出始めた。とはいえ、課題は山積み。というより試合に出るたびに新しい課題を突きつけられる。
「まず練習で、曺さんは意図を持って練習を組んでいるので、そのメニューを理解して、常に100%で臨んで吸収していく。そうやっていけば全体的にレベルは上がると思うので」
走行距離などのデータも今は特に意識して、自分のプレーの改善につなげている。
「走行距離は試合によってというところはありますけど、しっかり出て行ってしっかり戻ってくるという部分でまだ頼っているところがある。それでもスプリントの回数は増えてきた。10回前後だったのが平均的に15回くらいに上がっているので。もっと増やしていけると思う。
ツボさんだってあれだけ走っているんで、そう考えるともっと攻撃に出て行くパワーだったり、戻ってくるパワーだったりを持たないといけない。縦に追い越していくだけが湘南スタイルではないですし、しっかり戻るのもうちのサッカー。うちの良さはやっぱり全員で守って全員で攻撃するサッカーだと思いますし、そう考えると自分自身はまだまだ走んなきゃいけない。チャンスだって思ったときに飛び出していく力も、まだまだ足りないと思うんで」
課題がなくなることはない。それでもスプリントの回数が増えた後に出てくる結果は、きっと違ったものになっているのだろう。