ボイス
【ボイス:2016年6月30日】石川俊輝選手
自分にできる100%のプレーをして
ゴールやアシストという目に見える結果が出したい。
毎年、選手として登録されるのは30人前後。
その中で試合出場を掴むのは、
スタートからピッチに立つ11人と、交代に指名された3人の選手。
トップリーグのピッチには、自分自身とサッカーに向き合いながら、
ライバルたちとの激しいポジション争いに勝ち抜かなければ立てない。
今シーズン、そんな競争を制して
全試合でピッチに立ちつづけているのが石川俊輝選手。
悔しさを積み上げた2年を糧にチャンスをつかみ、
試合を重ねるごとにピッチで存在感を増している。
新たに拓いたサッカーの境地
ワンタッチで、時にドリブルで。軽快にボールをさばきながら独特のリズムに乗って縦横無尽にピッチを駆ける石川俊輝選手。軽いパス交換から縦への仕掛けにスイッチを入れたり、相手のパスコースを読んでスルスルとボールを自分のゾーンに引き込んだり、攻守に渡って“らしく”湘南スタイルを体現する。
「もともとはボランチでもバランスを取るタイプで、自分の役割としては相手のカウンターを防ぐというような考え方でした。だからベルマーレとしては異質なタイプというか。加入したばかりの頃は、『まず最初に縦』という考え方がなかったですし。今、縦パスをつけられるのは、1、2年目の苦労のおかげかなと」
中学・高校と大宮アルディージャのアカデミーで育ち、大学は東洋大学に進学。大宮ではカウンターに力点を置いたサッカーを学び、大学ではボールを大事にするポゼッションを重視したサッカーを経験した。どちらも攻撃を構築するなかで縦からの展開を意識することがあまりなかったため、湘南スタイルでまずやるべきこと自体を理解するのに時間がかかったという。
「いろんなサッカーを吸収できるのは幸せだと思う分、最初は本当に戸惑ったというか。大学では問題なかったパスが、ここに来て、『なんで横パスなんだ?』『なんで前に当てない?』とか。今も『あそこ、縦、見えてるけどつけていいのかな?』っていう迷いは少なからずあります。受け手にきついんじゃないかなとか思ったり」
技術が高く判断も早い石川選手は、どこでボールを持っても球離れがよく、隙あらば小気味がいいほど躊躇なく縦パスを入れ、縦への仕掛けを開始する。試合を見るなかでもっとも期待を高めてくれるプレーの一つだ。
「でも、あれだけ準備をしてくれる受け手がいるから自分はパスを出せるのであって、自分主導ではやっぱり縦パスは出せないと思います。受け手がすべてではないですけど、重要だと思ってるので。仁くん(端戸)だったり、洋平くん(大竹)だったり、ああいうふうに間で顔を出してくれなきゃ出せないですし。良いタイミングで良い場所に入ってきてくれるからこそ出せるというのは間違いなくあると思います。自分の武器というよりか、周りに助けられているような感覚はありますね。
そういうふうに考えると、サッカー選手としての幅は広がっていると思います。縦につけられて、しっかりキープもできた方がいいですし。いろんなサッカーを経験できていることは武器にもなっていると思います」
今シーズンは縦へパスを出した後、さらに自分自身が前へ走り込んで仕掛けていくことも多い。ペナルティボックス付近まで自分のプレーエリアを広げ、攻撃により厚みを加える。
「ゴールにどれだけ近付けるかっていうのは、今年意図的に取り組んでいる部分。今までだったら自分はバランスを見て、亮太くん(永木選手:現・鹿島アントラーズ)や俊介(菊地)に任せていたところ。でも、ボランチがペナの中に入っていくのは海外では普通なので、チャンスになりそうな場面で自分がどれだけ飛び出せるかっていうのは今年の課題にしてます。そこは今まで取り組んでこなかったことなので」
「今まで取り組んでこなかったこと」とはつまり、同じサッカーでもスタイルによって意識することも優先されるべきプレーも違うことによって生じるもの。石川選手は、湘南スタイルを体現することによってサッカーに対する考え方の面でもプレー面でも幅を広げている。
「自分が飛び出すというのは今までなかった感覚です。去年もシュートは打ってないですし。でも打って満足はしてないし、してちゃいけない。やっぱり決めてナンボなので。開幕戦でもあったし、だいたいどの試合でも自分にシュートを決めるチャンスはあって、それを決められるような選手にならないともう一段階上にいけないですし、決めれば成長できるだろうと思う」
バランスを重視して、より守備面に重心を置いていたというプレースタイルの特徴は、ボールを奪い取る場面でうかがえるだろうか。決して身体能力が高い選手ではないが、タイミングのよいタックルや相手にまとわりつくようなディフェスでいつの間にかボールを自分のものにしているシーンは多い。
「正直言ってこれといった武器はないんですけど、でもこの前、タックル数がリーグの中でも多い方だとコーチングスタッフに教えていただいたんです。自分がタックルしているのは無意識なんですけど、思った以上に上の方にいました」
タックルが無意識のプレーだったとは驚くが、ボールを奪うプレー自体は意識して磨いたものだという。特別に身体が大きかったわけでもスバ抜けた突破力があったわけでもない石川選手は頭を使ってプレーすることを早い時期から考え始めていた。
「自分が大宮のアカデミーにいた頃は、あまり強くなくて、なかなか攻撃に行けなくて、どうしたらボールが取れるだろうっていうことを中学校くらいで考えるようになって。
今、プロになっている選手は、守備的な人でも身体能力でできちゃうような人ばっかりだと思うけど、自分は身体能力もなかったし、パワーがあったわけでもないし、そうしたら頭を使って考えるしかないという答えになった。今になって考えるとそれが大きい財産になっているのかなと思う。よくストロングポイントを聞かれて困るんですけど、強いて自分のストロングを言うならインターセプトの部分と、そういう予測のところかなと思う」
今シーズンは今のところリーグ戦は全試合に絡んでいる。だからこそ見えてきたものも多いし、いい意味で欲も出てきた。
「今年は、目に見える結果を出したいと思ってます。ゴールだったり、アシストだったり、そこの部分が極端に足りてないので」
やや出遅れた感はあるチームも、徐々に勝ち星が増え始めてこれからが正念場。一つでも多く勝点を積み重ねていかなければならない。そのためには1点でも多くゴールが欲しいところ。ぜひ石川選手も、勝点3につながる得点を取って自信を深めて欲しいものだ。