ボイス
【ボイス:2016年5月11日】下田北斗選手
チームの勝利に貢献したい”
特徴は豊富な運動量と広い視野を確保したうえで繰り出される長短のパス。左足のキックは精度が高く、アグレッシブにプレーするなかでもミスは少ない。出場機会を得た試合では、シャドーとボランチのポジションを担い、らしさを発揮したプレーを披露している。1月にチームがスタートして約4ヶ月、湘南スタイルにも馴染んできたところ、という時期かと思い、そのことについて尋ねた。
「どうなんですかね……。去年僕はいなかったですけど、去年のものが湘南スタイルと言われると、もちろんそうなんですけど、でも今年、人も変わったなかで何が湘南スタイルかって同じことを求めてもしょうがないと思うし、そこにいるメンバーによっても変わってくるし。今年は今年で自分たちでしっかりスタイルを確立するのが大事だと思うし、それはそれで湘南スタイルだと思う。ただ、湘南スタイルに馴染んだかとかは、よくわからないというのが正直なところですね」
曺監督は、「自分なりのサッカー観があって、サッカー頭のすごく良い選手。だからこそ、戸惑いはすごくあると思う。自分のサッカー観から違うことを俺に言われているところもあると思うし」と下田選手について語る。下田選手の「よくわからない」という言葉には、そんな戸惑いが表現されたのかもしれない。とはいえ曺監督の言葉は、今の切磋琢磨が間違いなく下田選手自身の成長につながることも示唆している。
また、仮に本人に戸惑いがあったとしても、実際に攻撃のために行う守備やボールを奪ったらボールホルダーをどんどん追い越してゴールに向かうといった湘南スタイルのベースとも言える攻撃的な姿勢やタスクについて違和感を感じることはないという。
「自分でプレーをしていて、自分は元々攻撃的なスタイルというのがベースであると思うんですけど、違和感を感じたことはないし、やりやすいかなと思っている。でも、違和感はないですけど、求められていることが実際にできているかと言われたら、まだまだだと思います。もっともっと自分自身成長して、より良いプレーをしていかなければと思います」
下田選手が考えている良いプレーとは
「チームとしての約束事ややらなきゃいけないことは当然、プラスアルファ自分の持ち味も出していくことが、プロの世界で生きていくためには必要だと思う。左足のキックだったり、ゴールに直結するようなパスだったり、自分がゴールを決めるだったり、そういうところで違いを出していかないといけないと感じています」
2つのポジションを担い、意識していることはそれぞれ違う。
「シャドーは、攻撃では約束事がないなかで、僕の場合はスピードをもってどんどん抜けていくというタイプではないから、間でボールを受けて、はたいて、また嫌な位置でボールを受けて最後ラストパスだったりシュートだったりっていうプレーができればいいんじゃないかなと思っていて。守備面は前線から求められるんで、相手のディフェンスラインにプレッシャーに行ったり、自分の後ろを通されたらプレスバックしたり。
ボランチだったら攻撃は当然ゲームを組み立てたり、自分が前を向いてボールを持つことで相手にとって脅威になると思うし、味方も動きやすいと思うんで、ボールを持って前を向くことを意識しています。ディフェンスはやっぱり相手のキーマンが前線や中盤に入ると思うんで、そういった選手にしっかり負けないようにというのは意識しています」
チーム内ではタイプの違う選手とポジションを競っているが、下田選手がより前線でプレーするときにはディフェフェンスラインの間に顔を出し、相手が嫌がる部分を突いていくポジショニングが光る。
「身体が大きいわけでも強いわけでもないんで、それだったら相手の嫌なところ、嫌なところでボールを受けて、ある程度時間を作れるようなポジショニングを取るっていうことはすごい大事だと思います」
下田選手の目線は常に「どこが」あるいは「何が」相手の嫌がるところか、という部分に注がれている。自身のポジショニングも然りだが、出すパスの先についても同様の考えで送り先を見ている。
「ボランチの方が比較的プレッシャーが少ない場合がありますし、そこからボールを出していけばチャンスになると思うんで視野を広く確保することは意識しています。嫌なところ嫌なところっていうか。どこに出せばチャンスになるかを考えて。サイドハーフが上がってきて、前に人がたくさんいるっていうのは、ボールを持ってる側としては出しやすいですね」
試合に出ることが最優先と考えながらも、より回数多くボールに触れることができ、周囲を活かす側であるボランチのポジションに魅力を感じている。
「ボールを触れるし。シャドーだとボールが来ないこともあるんで。でも現状はシャドーの方が出場は多いかな。わからないけど、もう少しディフェンスのところもできればチャンスが来るのかなと思うんで、そこはしっかりやりたいです」
課題と感じているのは、出場機会の多いポジション柄もあるのか、アタッキングサードでのプレーについて。
「現状チームもあまり勝ててないし、自分のクセとしてボールを受けた後、まずパスコースを探しちゃうことが多いんで、相手のコートのラスト1/3に入ったときにドリブルで突っかけて仕掛けたり、ワンツーで崩したり、相手のゴールに向かって脅威になるプレー、シュートだったりをできればと思う。周りの選手も動きやすいと思うし、自分で行くだったり、周りを使うだったり、その使い分けをしっかりできるようになればよりチームとしていいのかなと思います」
ここまでの出場は、リーグ戦を第11節まで戦って先発出場が2試合と途中出場が4試合、ヤマザキナビスコカップのグループステージ3試合のうちフル出場が1試合と89分での交代が1試合。もちろん、満足できるものではない。
「物足りない部分もありますし、すごい悔しい。古巣だから出たかったというのはあまり良くないですけど、甲府との対戦も負けてしまいましたし、自分自身試合に出られなかった。やっぱり試合に出て勝ちたかったというのはすごくあります。2年間お世話になったチームだし、サポーターの方もすごく応援してくれたなかでサッカー選手なんで仕方がない部分もあるけど、自分の考えで移籍して。甲府では試合に出させてもらっていたのに、対戦では出られなかった。僕が決めることではないから仕方ないですけど、自分の力不足を感じました」
移籍先で在籍していた頃以上に活躍してこそ、元の所属チームやサポーターへ感謝の気持ちが伝わるもの。そういった思いを胸にしていた。戸惑いと悔しさと課題のなかで成長を期する今を過ごしている。