ボイス
【ボイス:2016年4月10日】藤田祥史選手
最前線を主戦場とする藤田選手。攻撃面ではクロスに合わせたり、ゴール前でのこぼれ球に鋭く反応してゴールキーパーをかわしてシュートを放つなど、一瞬の間合いを読んでゴールを仕留める冷静さが頼もしい印象だ。一方守備面でも献身的な動きで最前線からプレスを行い、湘南スタイルの信条であるアグレッシブな守備のスイッチ役として貢献している。
ベルマーレに移籍して初めて決めたゴールは昨年の1stステージ第17節、松本山雅戦(2015年6月27日開催)で決めた三竿雄斗選手のクロスに合わせたワンタッチのゴール。それは、同点に追いつかれた直後に途中投入されてのファーストタッチ、勢いに乗ろうとする相手の気持ちを折る勝ち越し点でもあった。相手の得点からキックオフを経て、サイドを駆け上がる三竿選手が上げたクロスボールがゴールネットを揺らすまではほんのわずかな時間、記録上でも1分と、一瞬たりとも目が離せないサッカーの醍醐味が凝縮されたゴールだった。
「そこは点を取るポイントとしては狙っているし、そういう意味では三竿がいいボールを上げてくれた。復帰してすぐに点を取れたのは良かったです」
怪我なく開幕を迎えた今季は、得点力のあるフォワードとして頼りになる存在感を放っているが、ピッチ内では他の選手に使われる役割だと笑う。
「運動量を増やしてチームのためにポストプレーとかして、最後はやっぱりゴール前に入って点を取るっていうのは、意識しているプレー。クロスの入り方から駆け引きしたり。裏に抜けたりとかも好きやし。
結局ワンタッチゴールが多い気がします。こぼれ球に反応するとか、クロスの入り方を工夫して最後とのところで先に触ってとか、裏に抜け出してワンタッチでキーパーと1対1でシュートとか。どんな形でもええから点を取りたいっていうのはあります。そういうところでしか生き残られへんからそこを磨いていったという感じですかね。裏を返せば自分一人でドリブルして点が取れるタイプでもないし、ゴリゴリ相手かわしてシュートも得意ちゃうし。俺も2、3人抜いてシュートとか入れたいですけど、まぁできないっすね(笑)」
こういった攻撃面でのスタイルは大学生までに出来上がった。立命館大学時代は、関西大学リーグで2年連続の得点王も獲得している。この結果でプロへの道を切り開いた。
守備面でチームのために走ることを学んだのはプロに入ってから。プロ生活のスタートを切ったサガン鳥栖は、その頃から豊富な運動量を武器にしていた。そこで当時、チームを率いた岸野靖之元監督(現松本大学サッカー部監督)に鍛えられた。
「前から守備してなおかつ点も取らなあかんで、みたいな感じで。俺が行った時はまだJ2で弱い時やったけど、皆必死に、今もそうやけど、それこそ今の湘南みたいな感じで走ってました。鳥栖でだいぶ鍛えられた感じ。キシさんのおかげです。俺の中ではキシさんは恩師で間違いないです」
30代を迎えてなお様々なチームから必要とされる献身的なプレースタイルの礎を鳥栖で築いた。このベースがあればこその湘南スタイルとの相性の良さだったのかもしれない。
「俺がマリノス1年目の時に湘南がJ1に上がって来た年で、その時はあまり意識しなかったけど、翌年にJ2の試合を観たときに『運動量が多くてすごく良いサッカーしてるな』と思った。で、いざマリノスが湘南と練習試合をしたときに人がどんどんどんどんあふれてきて。みんな生き生き楽しそうにやっていて、良いチームやなと思ったのは覚えています。」
2014年は、J2リーグを再び戦いながら前年J1で経験した悔しさを晴らすべく、湘南スタイルの継続と深化を図った年だ。この年にマリノスタウンで行われた練習試合に出場した藤田選手は、湘南スタイルを実際に体感した。そしてその時にいいチームだと評価したベルマーレからのオファーは藤田選手にとってもチャンスと捉えられるものだった。
「年齢もそうやし、ましてやチームが昇格してJ1でやるっていうなかで声をかけてもらったのはありがたかったですね。
マリノスは契約も残っていたんですけど、なかなか試合に出場するチャンスもなくて。自分としてももう1回自分を鍛え直したいなと思ったときだったんで、湘南のサッカーはそういう自分の希望にもあっていた。しっかり鍛えて1年でも長くサッカーしたいですからね」
そしてもう一つ、思うところがあった。
「J1でなかなか結果が残せてなかった。そういう意味ではJ1の違うチームからオファーが来たので、そこでもう一回鍛え直してJ1で結果を残したいなという思いがあった」
鳥栖でプロ生活を始めてJ1の大宮アルディージャに移籍、その後J2リーグの横浜FC、ジェフユナイテッド市原・千葉を経て再びJ1の横浜F・マリノスへ加入した。チーム遍歴をたどると分かる通り、J2のクラブでは主軸として活躍して結果を残すものの、請われて移籍したJ1のクラブではなかなかチャンスをものにすることができず、自分自身心にくすぶるものを抱えていた。
「もう一花咲かせたいなと、ちょっと狙っているんですけどね。J1で二桁得点を取りたいなって思うし、1年を通してコンスタントに試合に出たいという希望もあります。二桁取れればサッカー選手寿命も延びるやろし。今年はちょっと頑張りたいですね」
ポジションに限定されることなくどの選手にも得点のチャンスがあるのが湘南スタイルの真骨頂だが、それでも前線の選手には積極的に得点に絡んで欲しいもの。怪我の影響がまといついた昨年の鬱憤を晴らす意味でも今シーズンの活躍に期待したい。