ボイス
【ボイス:2015年7月8日】菊池大介選手 [1]
勝敗に関係なく、試合ごとに感じる手応え。
2ndステージは、同じ相手に二度負けない思いで臨む。
11年ぶりのJ1昇格から数えて5シーズン目。
今度こそ「J1に定住する」と決意を固めて臨んだシーズンも
折り返しまでやってきた。
前半戦を振り返れば、昨年のみならず、
これまで積み上げてきたシーズンのすべてが
その糧になっていることがわかる。
なかでも10代から昇格と降格を繰り返し経験した
若手たちの成長が心強い。
自身、二度目のJ1の舞台で雪辱を期すのは
16歳2カ月でJ2デビューを果たした記録を持つ菊池大介選手。
今、主戦場としている左サイドで躍動する姿がたくましい。
与えられたポジションで、そのタスクとひたすら向き合うことが選手の存在感をより際だたせることがある。高校1年生でトップチームに登録され、24歳になった現在、チームの顔を象徴する背番号「10」を背負う菊池大介選手が今シーズン放つ空気には、今までにない熱量が感じられる。初めてプロのピッチに立った時から数えて9シーズン目、自分自身もまたこれまでとは少し違う手応えを感じている。
「すごく充実してます。練習や試合で、うまくいかないことはもちろんありますけど、それも成長するためのものだとプラスに捉えられている。そういう意味では毎日楽しいですし、結果どうこうではなくて試合も楽しみにできています」
変化はプレーにというより、プレーに臨む姿勢に表れている。自分自身がピッチで表現する良いプレーにも悪いプレーにもこだわることなく瞬時に受け止め、次の瞬間に意識を備える。90分間、集中力は途切れることがない。
「自然にそうなれたっていうか。去年1年で……そう、去年1年はどっちかっていうと意識して。集中することもそうですし、プレーもそうですけど、毎日しっかり意識して過ごしたっていうのがあって。それが良い意味で馴染んだという感じです。今年はそれを自然体で、それが普通っていうふうに考えられるようになった。毎日の仕事、日々の練習っていうのを大事にできるようになりました」
J2リーグにデビューしたのは16歳2カ月。いまだに破られていない最年少記録だ。そのまま2種登録選手として高校の2年間を過ごし、高校3年生でプロ契約に至った。才能は折り紙付き。今年、プロとして7シーズン目を迎えている。
その間ももちろん、生き生きとしたリズムのドリブルや柔らかいボールタッチなど、アグレッシブで攻撃的なプレーはスタジアムに集まるサポーターを魅了してきた。ただ、ここ最近まで、良いときと悪いときの差があったり、90分のなかで集中力を欠いた瞬間を見せることが少なからずあった。ところが今シーズンは、そういった隙がない。
「一昨年、曺さんと話をして、自分のなかで『変わらなきゃ』って思った。うまくいってないシーズンだったし、1回、自分を見つめ直さなきゃ、と。
曺さんには、『毎日を本当に自分のものにしようとしているのか?』『アップから100%で入っているのか?』っていうところはすごく言われましたね。集中力についてはすごく、まぁ今もそうなんですけど(笑)、『集中力を持っているのか?』って。そういうことを話したことがきっかけになって、自分のなかで一回、きちんと意識して取り組まなきゃなって思ったんです」
集中力が続かない課題は、常に指摘されてきたもの。本人も自覚し、毎年毎年、課題に挙げては取り組んできた。しかし、なかなか身につかなかったのが現実だった。
「去年のシーズンは、自分にとってすごく大きかったと思います。一番は、練習に取り組む姿勢。そこが一番、自分で変わったって自信を持って言えるところなので、それを今年も継続して。もちろん、ミスしたり、きつくて走れなかったりっていうのがなくはないんですけど、集中力を維持してしっかり練習と向き合うっていうところで言うと、今も継続してできている。去年それを1年やり通してああいう結果を残せて、今年それをまた継続して入ってこれているのは大きいところだと思います」
練習の時から100%でやること、集中力を保ち続けること、それを意識し続けた。もちろんこれまでのようにその意識が途切れることもあったが、途切れた瞬間にフォーカスし直し、「無理矢理にでも取り組むように意識した」という。それほどまでに一昨年の経験は悔しいものであり、曺監督からの指摘は鋭く心に響いた。それに加えてもうひとつ、昨年、同い年の選手が大卒ルーキーとして加入したのも刺激になった。
「もう若くないっていうか(笑)。すごく若い時からトップでやらせてもらっていて、本当に早いなって。そろそろっていう言い方はおかしいですけど、もう引っぱる立場にならなきゃいけない。それは声だけじゃなくてプレーでもそうだし。そういうところはすごく感じるようになりました」
重ね続けた努力が実り,自信となって今シーズンを支えている。長年の課題を越えて階段をひとつ上ったその位置からは新しい景色が見えているに違いない。