ボイス
【ボイス:2015年5月27日】藤田征也選手 [1]
ここぞというときに結果を出せるプレーができてこそ、J1のレベル。
わかっていても止められない選手をめざす。
湘南スタイルの象徴のひとつである、両サイドの攻撃力。
左右それぞれに特徴があり、
右サイドはタッチライン際で勝負を仕掛けながら
タイミングよくクロスに持ち込む藤田征也選手のプレーが光るときこそ、
チームが“らしく”躍動している展開だ。
その藤田選手は、昨年の開幕戦直後に電撃加入してから
38試合に出場し、湘南スタイルを体現する中心選手のひとりとなった。
1年間の活躍を支え、J1のステージで戦う今季へ繋いだ思いを聞いた。
J1で戦い抜ける強さを培い身につけようと、自分たち自身と向き合い続けた2014年を経て迎えた今シーズン。実績あるチームとの試合が続いた序盤こそ黒星が先行したが、それでも試合巧者のチームを相手に自分たちのスタイルを貫く戦いぶりを披露し、手応えを結果へと繋げ、13節を終えた時点で5勝3分5敗と星を五分に戻している。今選手たちは、J1のステージで通用すること、しないこと、さまざまな経験を自分たち自身に刻んでいる。
「良いゲームをできているので、その部分に自信を持って続けていけば良いいかなとは思う。でも、良いゲームをすればいいというわけでもないし、J1に居続けるためには結果というものが本当に大事なので、そこが今はちょっとついてきていない。そこがJ1に長く居るチームとの差なのかなというのもある。
自分たちのやりたいことをやれば十分通用するということは感じているので、これからそのレベルをもうひとつ上げて内容も伴ってしっかり勝ちにつなげられるゲーム運びとか、そういったものが大事になってくるのかなと思います」
常にJ1を意識して質にこだわってきたとはいえ、実際のピッチに立って経験豊かな選手を相手にしてみれば、J2では遭遇することのなかった精度の高いパスやシュートが放たれ、アイデアあふれるプレーが目の前で繰り広げられる。選手たちは今、イメージしていた世界から外に出て現実のぶつかり合いを身をもって経験している。その差を必死で埋めているところといえるかもしれない。
とはいえ90分を通してみれば、ゲームの主導権を握る時間帯も互角にあり、攻守に渡って昨年積んだものの確かさも感じられる。藤田選手自身が感じている個人としての印象も悪くはない。
「自分に自信をもってプレーできているので、これを続けていきたいし、試合に出るなかでチームの結果もそうですし、自分個人としてもやっぱり結果を出していきたいという思いはあります」
藤田選手がこだわる結果といえばやはり攻撃的な部分。昨年は38試合に出場して1得点だったが、今年はすでに1得点決めている。
「だけどチャンスはもっとあるので、そういうところをしっかり決めきれるようにしていきたいなと思います」
右のサイドハーフで出場する機会が多い藤田選手。主戦場であるタッチライン際での1対1を制し、縦に突破して上げるクロスは観る側の期待も高める。ところが今シーズン決めた得点は、相手陣内に入ってから中央へカットインし、何人かの選手と中央で仕掛けるなかでフリーになってシュートを打つという昨年までの藤田選手にはあまりない形からだった。
「去年よりは中に入るプレーは増えているかなというのはあります。意識もしてるし、曺さんにも言われたりしてるんで。試合でちょっとずつ出せるようになってきてるのかなと思います。
J2だと縦に行ってクロスだけでもチャンスはつくれたけど、J1だとやっぱり読まれちゃう。ディフェンスもレベルが高いんでやっぱり両方、縦も行って中も入ってっていうふうにしないと難しい部分があると思う」
攻撃の幅を広げるプレーに加えて、藤田選手の成長が見て取れるのがディフェンス面。昨シーズン、宇佐美宏和選手(現・モンテディオ山形)と同じポジションを争っていたが、ふたりの特徴は対照的で、攻撃的な藤田選手、守備に強い宇佐美選手というイメージがあった。しかし、今シーズンは守備面でも丁寧にしぶとく対応して、たくましさを増している。
「嫌がらずにやれるようになったというのはあるかなとは思います。(アルビレックス)新潟でサイドバックをやっていたときは、ボールを持っているときは良いけど守備に回ると苦手意識があった。そこはだいぶなくなってきたかなと思います。
やっぱり1年間を通して試合に出られたのは大きかった。試合に出て出来るようになってきたと思います。新潟では年間を通して試合に出るっていうことがなかなかなかったけど、久しぶりに1年間通して試合に絡めたから」
曺監督は藤田選手の変化を感じている。「昨年も良かったと思うけど、今年はすごく良い。サッカーに対して自覚とか責任感が出てきた」と評する。
「変わりましたかね? でも、湘南に来てサッカーがまた楽しくなったし、自信を持ってやれるようになりました。
やっぱり試合に出られたというのがあるし、自分の得意なポジションをやれて、自分が思い描いたプレーもできるようになってきた。それで自信を持ってプレーできるようになったかなと」
何よりもまず「純粋にサッカーを楽しんで欲しい」というのが曺監督の指導の根幹。藤田選手は、試合に出て自分らしいプレーを表現して自信をつけ、自信をつけることによって苦手だったプレーを自分の強みに変えてきた。こうした一人ひとりの切磋琢磨がチームの力を押し上げている。