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【ボイス:2015年5月1日】曺貴裁監督 [5]

新しいハーモニーを奏でる、2015シーズンの湘南スタイル

 曺監督が今まで率いてきたチームは、平均年齢がリーグで1、2を争うほど低い傾向にあった。そのなかで坪井慶介選手や藤田祥史選手、アンドレ バイア選手の存在は今までにないチーム作りを思わせる。「証明」や「J1定着」といった高い目標を達成することを念頭に置いているのだろう。とはいえ、曺監督が年齢で選手を図ることはないのは誰もが知るところだ。

「もちろん年齢のバランスのことは考えるけど、ベテランだから経験を伝えて欲しいとはそもそも思ってない。選手が、このチームでやることで自分のプレーが伸びる、この選手と組むことでいろんなものが生み出されるっていうことだけ。
 しっかりしたベテランがいたらそういう前提はあると思うけど、大体頑張ってないベテランの言うことには誰も耳を貸さないでしょう。ただ、年齢が高くなればケガのリスクとか当然そういうところは高くなっていくんだろうけど、慶介も祥史もバイアもベテランだから練習を減らすっていうことはうちではないし、同じ練習をやっている」

 経験を伝えるよりはむしろいっしょに切磋琢磨し、伸び代を見せて欲しいという。ベテラン選手が改めてサッカーに真摯に取り組む姿こそが若い選手の力になるのかもしれない。
 また、山田直輝選手や可児壮隆選手といった、今までの湘南スタイルに新しい風を吹き込むような選手の加入にも、これからのチームにどんな色が加わるのか期待が高まる。

「基本的に練習でやっていても、公式戦で観ないとサポーターや観てる人は認めないと思う。でも、うちが積み上げのあるチームだとしたら、新しく来た選手がうちのスタイルにすぐに馴染んでバンバン試合に出てくるっていうのもおかしい話。だから当然、そこの時間はかかってるけど、俺は練習の中でも彼らの変化を同時に掴んでいる。試合に出て、例えば2点取ったから馴染んだっていう話でもない。監督としては、一番良いタイミングに選手を使う責任がある。なかなか実践で観る機会がないからどうなんだろう? と思うかもしれないけど、このチームも全体的にそんなに甘いもんじゃないっていうレベルになってきている。だから彼らも学ぶことを学んで、自分の良さを活かすのに時間もかかるだろうし。でもその時間っていうのは彼らにとって絶対に有意義だった、意味があったって思っているから、そういう意味での即効性を俺はあんまり求めてない。それにサッカーって、ひとりの選手がチームに入ったからっていきなり変わったとか、そんなものではないから。どこのチームもそうだと思います」

 この言葉通り、新加入選手も出場機会を掴みつつあり、スターティングイレブンにも名を連ねてきた。しかもその個性あふれるプレーぶりは、新しい楽しみを与えてくれる。新加入選手たちが湘南スタイルに今までにないハーモニーをもたらしている。シーズンはまだまだ長い。『J1に住むために』今シーズン集まった選手たちが奏でるハーモニーが、この先さらに楽しいものになることを期待している。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行